2014.03.22 (第2615話)チョット中休み エッセイvol.85 ~対面の儀~
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チョット中休み エッセイvol.85
対面の儀
~アナタに出会えて良かった(5)~
ワタシがヒデ君に言った、
「写真、観て、
笑ったらアカンで・・・」
の、理由を伝えよう。
Hさん 享年64歳
ところが、“遺影”の写真は、30代前半?
と、かなり、若い。
「アレ?誰の告別式に来たんだっけ?」
キツネにつままれたように感じるかもしれない。
一見すると、別人、
だが、よく見ると、
しっかりと面影が残っているあたりや、
ウェーブがかった黒髪がフサフサしているところや、
はにかむような微笑みがなぜか
“流し目”であるところや・・・
それらをひっくるめての
「なんとも味わい深い表情」
が、ヒデ君の記憶の中のHさんのキャラクターと相まると、
絶妙なユーモラスを生み出しかねない。
告別式という独特の気配の中、
笑いのツボにはまり込んだら大変だと、懸念したのだ。
後に“しばてんの里”のご実家で、
(第2612話参照)
遺影に加工する前の“原物”を見せていただいた。
なんと、ダンスパーティでの写真!?
ワイシャツの上に、濃紺の蝶ネクタイ、
赤いチョッキという出で立ちだ。
(蝶ネクタイ、チョッキは加工時に消されていた)
そして、
あの「なんとも味わい深い表情」の直接的理由は、
おそらく、コレだろう。
腕組みしたHさんの腕に、
割り込むように腕を差し入れた、
カーリーへアの女性・・・
ダンス仲間との楽しげな
ツー・ショット写真だったのだ。
「ここ(実家)では、
この写真しか見当たらなかった」
と“お母さん”
「この写真のオカゲで、ちょっと救われた」
とは、ヒデ君。
「遺影の写真を見るのが辛い、と思っていた。
まだ、信じられていない自分がイルから・・・
けど、アノ写真は、確かにHさんだけど、
僕らの知ってるHさんじゃない。
現実味がないので、気持ちを落ち着けて、
状況を見届けることができる・・・」
確かに、告別式の“前半”は、ワタシもそうだった。
悲しみの感情は静まり、
穏やかにコトを見守る体勢でいられたのだ。
式は、密葬といった様子で、小規模、少人数。
参列者も含め、高齢の方が多い。
会社の関係者、友人関係・・などは、見当たらない。
寂しいというより、あっけらかんとした印象。
晴天で非常に明るい日であったため、
余計に、ソウ感じたのだろうが。
式は淡々と進み“後半”にさしかかった。
ワタシタチの “役割” を、
(第2612話参照)
実際の行動に移していく時間がやってきた。
まず、お焼香。
その際に、ご両親も確認できた。
“仲間”の想いを伝えるべく、心の用意もできた。
この先に控える
「最後のお見送り」
は、最も大切な時間となるはずだった。
“仲間”と1つになり、祈ろう
“送る言葉”を手向けよう
どんなに辛くても、
Hさんの表情なりは、
しっかりと見届けなければならない・・・
と、アナウンス
「ご親族以外の方は、ロビーにてお待ちください」
「え?(Hさんの)顔、見れないの?」
ヒデ君が、ソウつぶやいた次の瞬間だった。
“お母さん”が、
ワタシタチのところに、飛んで来られたのだ。
コレが“お母さん”との初・対面だった。
この瞬間から、
ワタシの中に“お母さん”という存在がトンと降り立ち、
まんま、ドンドンと膨らんでいく・・・
後になって気づくことだが、
「アナタに出会えて良かった」
の始まりだったのだ。
話を戻そう。
“お母さん”は、飛んで来てくださった。
「遠いところから、わざわざ・・・」
非常に小柄なカラダ。
そこに背負われたであろう、大変な苦しみ。
一気に、涙が溢れ出て来た。
ナニか言わなければ、と思っても、言葉にならない。
嗚咽だけが漏れる。
“お母さん”も、涙が押し寄せた感じだった。
“お母さん”の、泣かれる姿を見たのは、
コレが最初で最後とナル・・・
「どうぞ、顔を見てやってください」
対面。
その、途端、
ヒデ君が、
グワァ〜ッと泣き出した。
「あぁ“現実”やったんや」
と、ヒデ君。
「久しぶりに、会えたのに
・・・なんでやねん」
2人して、人目をはばからずの号泣。
“静止”していた斎場の空気を、
いっぺんにかき回してしまった感がやや気になった。
親族でもないのに、かえって、不謹慎?
理性が働く余地はアル、が、どうにもならないのだ。
2人共、おそらくは、
生まれて初めて知る感覚でアリ、辛さだった。
「この“肉体”では、
もう踊ることはないんやなぁと、思った」
「オレな、
Hさんの左の胸に触れてんで。
しっかり、していたわ」
その辺りに、
みんなからの“送る言葉”をそっと置いたという。
最後に、ポツリ
「凛々しい顔やった」
まぶたも唇も柔らかく閉じ、
まるで、眠っているような、穏やかな表情。
心地良い音楽に聴き入っているかのよう。
でも“凛々しい”という言葉が、
ワタシ的にもピッタリだった。
カッコいい、男らしい表情だった。
ふと、思い出した。
「パソドブレ(今年から始まった闘牛士のダンス)
上手くなりたいって言っていたものね」
花をたくさん、入れた。
最後に、
白い胡蝶蘭を、左ほほの側に飾った。
「Hさん、ありがとう、ね。
みんな、ずーっと、愛しているよ」
この「最後のお見送り」の後、
ナニヤラ、スイッチが切り替わった。
“最後”どころか、
ここから、本格・スタートとなる予感・・・
果たして、その通りとなった。
ワタシタチは、“役割”を果たすべく、
まるで、H さんに導かれるように、
不思議な“展開”に身をゆだねるようになる・・・。
続く第2616話へ
※Real Junko Voiceはお休みです。
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笑ったらアカンで・・・」
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Hさん 享年64歳
ところが、“遺影”の写真は、30代前半?
と、かなり、若い。
「アレ?誰の告別式に来たんだっけ?」
キツネにつままれたように感じるかもしれない。
一見すると、別人、
だが、よく見ると、
しっかりと面影が残っているあたりや、
ウェーブがかった黒髪がフサフサしているところや、
はにかむような微笑みがなぜか
“流し目”であるところや・・・
それらをひっくるめての
「なんとも味わい深い表情」
が、ヒデ君の記憶の中のHさんのキャラクターと相まると、
絶妙なユーモラスを生み出しかねない。
告別式という独特の気配の中、
笑いのツボにはまり込んだら大変だと、懸念したのだ。
後に“しばてんの里”のご実家で、
(第2612話参照)
遺影に加工する前の“原物”を見せていただいた。
なんと、ダンスパーティでの写真!?
ワイシャツの上に、濃紺の蝶ネクタイ、
赤いチョッキという出で立ちだ。
(蝶ネクタイ、チョッキは加工時に消されていた)
そして、
あの「なんとも味わい深い表情」の直接的理由は、
おそらく、コレだろう。
腕組みしたHさんの腕に、
割り込むように腕を差し入れた、
カーリーへアの女性・・・
ダンス仲間との楽しげな
ツー・ショット写真だったのだ。
「ここ(実家)では、
この写真しか見当たらなかった」
と“お母さん”
「この写真のオカゲで、ちょっと救われた」
とは、ヒデ君。
「遺影の写真を見るのが辛い、と思っていた。
まだ、信じられていない自分がイルから・・・
けど、アノ写真は、確かにHさんだけど、
僕らの知ってるHさんじゃない。
現実味がないので、気持ちを落ち着けて、
状況を見届けることができる・・・」
確かに、告別式の“前半”は、ワタシもそうだった。
悲しみの感情は静まり、
穏やかにコトを見守る体勢でいられたのだ。
式は、密葬といった様子で、小規模、少人数。
参列者も含め、高齢の方が多い。
会社の関係者、友人関係・・などは、見当たらない。
寂しいというより、あっけらかんとした印象。
晴天で非常に明るい日であったため、
余計に、ソウ感じたのだろうが。
式は淡々と進み“後半”にさしかかった。
ワタシタチの “役割” を、
(第2612話参照)
実際の行動に移していく時間がやってきた。
まず、お焼香。
その際に、ご両親も確認できた。
“仲間”の想いを伝えるべく、心の用意もできた。
この先に控える
「最後のお見送り」
は、最も大切な時間となるはずだった。
“仲間”と1つになり、祈ろう
“送る言葉”を手向けよう
どんなに辛くても、
Hさんの表情なりは、
しっかりと見届けなければならない・・・
と、アナウンス
「ご親族以外の方は、ロビーにてお待ちください」
「え?(Hさんの)顔、見れないの?」
ヒデ君が、ソウつぶやいた次の瞬間だった。
“お母さん”が、
ワタシタチのところに、飛んで来られたのだ。
コレが“お母さん”との初・対面だった。
この瞬間から、
ワタシの中に“お母さん”という存在がトンと降り立ち、
まんま、ドンドンと膨らんでいく・・・
後になって気づくことだが、
「アナタに出会えて良かった」
の始まりだったのだ。
話を戻そう。
“お母さん”は、飛んで来てくださった。
「遠いところから、わざわざ・・・」
非常に小柄なカラダ。
そこに背負われたであろう、大変な苦しみ。
一気に、涙が溢れ出て来た。
ナニか言わなければ、と思っても、言葉にならない。
嗚咽だけが漏れる。
“お母さん”も、涙が押し寄せた感じだった。
“お母さん”の、泣かれる姿を見たのは、
コレが最初で最後とナル・・・
「どうぞ、顔を見てやってください」
対面。
その、途端、
ヒデ君が、
グワァ〜ッと泣き出した。
「あぁ“現実”やったんや」
と、ヒデ君。
「久しぶりに、会えたのに
・・・なんでやねん」
2人して、人目をはばからずの号泣。
“静止”していた斎場の空気を、
いっぺんにかき回してしまった感がやや気になった。
親族でもないのに、かえって、不謹慎?
理性が働く余地はアル、が、どうにもならないのだ。
2人共、おそらくは、
生まれて初めて知る感覚でアリ、辛さだった。
「この“肉体”では、
もう踊ることはないんやなぁと、思った」
「オレな、
Hさんの左の胸に触れてんで。
しっかり、していたわ」
その辺りに、
みんなからの“送る言葉”をそっと置いたという。
最後に、ポツリ
「凛々しい顔やった」
まぶたも唇も柔らかく閉じ、
まるで、眠っているような、穏やかな表情。
心地良い音楽に聴き入っているかのよう。
でも“凛々しい”という言葉が、
ワタシ的にもピッタリだった。
カッコいい、男らしい表情だった。
ふと、思い出した。
「パソドブレ(今年から始まった闘牛士のダンス)
上手くなりたいって言っていたものね」
花をたくさん、入れた。
最後に、
白い胡蝶蘭を、左ほほの側に飾った。
「Hさん、ありがとう、ね。
みんな、ずーっと、愛しているよ」
この「最後のお見送り」の後、
ナニヤラ、スイッチが切り替わった。
“最後”どころか、
ここから、本格・スタートとなる予感・・・
果たして、その通りとなった。
ワタシタチは、“役割”を果たすべく、
まるで、H さんに導かれるように、
不思議な“展開”に身をゆだねるようになる・・・。
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