初めての方へ 目次 エクササイズ&プラクティス集
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読者限定ワークショップ
特別シリーズ
社交ダンスを教えるということvol.8
ワタシの先生のように踊って欲しい・・・
パートナーシップ違約行為②
クリスマス・パーティを目前に控えた、
ある日のグループレッスンでのこと。
学習発表、今回の種目はタンゴだ。
珍しく、くじ引きでカップルを決定。
みんなの士気が高まってきた。
良いムードだ。
ところが、
カップルに分かれての練習タイムが開始されてまもなく、
“事件”が起こった
T氏とカップルになったK美が、ワタシを手招き。
そして、とんでもないことを言い始めたのだ。
「Tさん、すごく、踊りにくいんです。
全然、リードが伝わりません。
それに、ホールドもきつくって・・・
ワタシのシルエットが壊されるんです」
ワタシ、いったい、どうしたらイイの!?
非常に困惑した“被害者”表情での訴えだ。
T氏を目の前において、である。
その歯に衣着せぬ言葉には、コチラがドキッとしたほどだ。
見ると、T氏の顔はひきつっている。
そしてその目には、うっすらと涙が。
かなりのショック状態のようだ。
ワタシは、T氏の気持ちがよくわかった。
「なぜこの人に、
こんなイヤなことを
言われなければならないのだろう!?」
“なぜ、この人に”には、意味がある。
K美がグループレッスンのメンバーに加わったのは、
まだ最近のことなのだ。
つまり、T氏のほうが明らかに“先輩”。
またダンスも、誰が見てもT氏のほうが上級者。
K美は、まだ、自立した動きができていない。
たぶん、男性と組まなければ、
キチンとしたシャドウも踊れないだろう。
それよりなにより、
目の前で、厳しい批判ができる“関係”ではないはずなのだ。
先ほど、学習発表用に組んだばかりの、
期間限定・即席カップルなのだから。
練習してきた成果を存分に出しあい、
今できる限りの、
良いパートナーシップを体験できるようお互い協力しあう
・・・ソレしかテーマはないはずなのに。
オマケに、日頃、K美は控えめでおとなしく、
知的でさえある。
攻撃タイプには決して見えないのだ。
ワタシは本当に驚いた。
T氏はもっと驚いただろう。
一瞬にして、
非常に複雑なショック状態に陥ったことがうかがい知れた。
ワタシは落ち着いて対処に努めた。
K美の意見もないがしろにはできないため、
大切に取り入れながら、T氏に助言。
そして、二人に、
「相手を変えようとはせず、
自分に今できることを精一杯、ヤルように」
学習発表というものの趣旨をも暗に告げたのだ。
そして、遠くから観察することに決めた。
K美は、いったんは、納得したように見えた。
ところが、ワタシがその場から居なくなるや、
今度は自ら“教え魔”に変身。
自分がようよう知っている範囲のダンス的知識を寄せ集め、
なんと、T氏に教え始めたのだ。
あくまで、
T氏を“自分用”に変えることに必死なのだ。
と、そのうち、
耳を疑うような声が聞こえてきた。
「私の先生のように踊って欲しいのよ・・・」
ちなみにこの“私の先生”とは、
ワタシの事を指すのでは、ない。
実はK美は、
別の教室の男性教師の個人レッスンも受けていたのだ。
競技会の現役。
年はかなり若いようでもある。
K美はその教師と、何度か、
ホテルのデモに出演した経験もあるようだ。
K美にとって、その先生とのレッスンは特別なモノであった。
非常に楽しみな時間であるとともに、
これ以上はないほどの苦痛な時間でもあったのだ。
K美はいつも怒られていた。
アソコができていない
ココができていない・・
「アナタがそんなだと、僕が踊れないでしょ」
それが、男性教師の口癖なのだという。
なぜ、ココまでワタシが詳しく知っているのか?
ソレは、K美は1ヶ月に1度、
ワタシの個人レッスンも受けていたからだ。
何を学ぶのか?
ひとえに
“私の先生”と、どうやったらうまく踊れるか?
男性教師から受ける注意の解釈が主なレッスン内容だった。
K美のカラダは非常にリキミが強かった。
インナーマッスルの使い方などを教えると、
チャンと反応できる優れたボディを持っているにも関わらず、だ。
K美のカラダは、
その男性教師用に仕立て上げられていたのだ。
もっと言うならば、その先生でないと踊った気がしない。
だから、どうしても男性に対する要求がキツクなるワケだ。
「ワタシ、あまり、他の男性とは踊りません」
とK美は言う。
“私の先生”以外でよく踊るのは、
グループレッスンの男性ぐらいとか。
ほんのたまにパーティにも行くという。
「ただ、レベルの高い人が集まるパーティにしか行きません」
パーティ会場で出会ったばかりの人に、
文句を言ったり、注文をつけたり・・はないようだ。
では、今回のT氏への態度は、なぜ?
短期間であるとはいえ、
自分のダンスに深く関わってくる“ダンス・パートナー”だと、
ココロとカラダが判断したからかもしれない。
となると、自動的に、
基準は男性教師になってしまうだろう。
「私の先生のように踊って欲しいのよ・・・」
発言が飛び出す理由だ。
おそらくは無意識に
“私の先生”を相手に求めてしまう
相手の男性にとって、これは非常に迷惑なことだ。
その上、さらに迷惑なことに、
K美自身が男性教師から受けている“屈辱”を
そのまま、相手に与えているようなのだ。
「床をもっと踏んで」
「顔を上げて」
「肩を下ろして」
K美の頭の中にインプットされた“注意・注文”が、
これまた自動的にアウト・プットされているという状態なのだ。
さて、K美の口からは常に、
“私の先生”の話が飛び出してくる。
どれほどな屈辱を受けても、
その男性教師のレッスンを辞める気はないようだ。
このままでは、
自分のダンスが決して上手くならないとわかっていても?
答えはイエス。
これも一種の“ダンス恋愛”(第1064話参照)なのだろうか。
続く第1066話へ
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みんなの士気が高まってきた。
良いムードだ。
ところが、
カップルに分かれての練習タイムが開始されてまもなく、
“事件”が起こった
T氏とカップルになったK美が、ワタシを手招き。
そして、とんでもないことを言い始めたのだ。
「Tさん、すごく、踊りにくいんです。
全然、リードが伝わりません。
それに、ホールドもきつくって・・・
ワタシのシルエットが壊されるんです」
ワタシ、いったい、どうしたらイイの!?
非常に困惑した“被害者”表情での訴えだ。
T氏を目の前において、である。
その歯に衣着せぬ言葉には、コチラがドキッとしたほどだ。
見ると、T氏の顔はひきつっている。
そしてその目には、うっすらと涙が。
かなりのショック状態のようだ。
ワタシは、T氏の気持ちがよくわかった。
「なぜこの人に、
こんなイヤなことを
言われなければならないのだろう!?」
“なぜ、この人に”には、意味がある。
K美がグループレッスンのメンバーに加わったのは、
まだ最近のことなのだ。
つまり、T氏のほうが明らかに“先輩”。
またダンスも、誰が見てもT氏のほうが上級者。
K美は、まだ、自立した動きができていない。
たぶん、男性と組まなければ、
キチンとしたシャドウも踊れないだろう。
それよりなにより、
目の前で、厳しい批判ができる“関係”ではないはずなのだ。
先ほど、学習発表用に組んだばかりの、
期間限定・即席カップルなのだから。
練習してきた成果を存分に出しあい、
今できる限りの、
良いパートナーシップを体験できるようお互い協力しあう
・・・ソレしかテーマはないはずなのに。
オマケに、日頃、K美は控えめでおとなしく、
知的でさえある。
攻撃タイプには決して見えないのだ。
ワタシは本当に驚いた。
T氏はもっと驚いただろう。
一瞬にして、
非常に複雑なショック状態に陥ったことがうかがい知れた。
ワタシは落ち着いて対処に努めた。
K美の意見もないがしろにはできないため、
大切に取り入れながら、T氏に助言。
そして、二人に、
「相手を変えようとはせず、
自分に今できることを精一杯、ヤルように」
学習発表というものの趣旨をも暗に告げたのだ。
そして、遠くから観察することに決めた。
K美は、いったんは、納得したように見えた。
ところが、ワタシがその場から居なくなるや、
今度は自ら“教え魔”に変身。
自分がようよう知っている範囲のダンス的知識を寄せ集め、
なんと、T氏に教え始めたのだ。
あくまで、
T氏を“自分用”に変えることに必死なのだ。
と、そのうち、
耳を疑うような声が聞こえてきた。
「私の先生のように踊って欲しいのよ・・・」
ちなみにこの“私の先生”とは、
ワタシの事を指すのでは、ない。
実はK美は、
別の教室の男性教師の個人レッスンも受けていたのだ。
競技会の現役。
年はかなり若いようでもある。
K美はその教師と、何度か、
ホテルのデモに出演した経験もあるようだ。
K美にとって、その先生とのレッスンは特別なモノであった。
非常に楽しみな時間であるとともに、
これ以上はないほどの苦痛な時間でもあったのだ。
K美はいつも怒られていた。
アソコができていない
ココができていない・・
「アナタがそんなだと、僕が踊れないでしょ」
それが、男性教師の口癖なのだという。
なぜ、ココまでワタシが詳しく知っているのか?
ソレは、K美は1ヶ月に1度、
ワタシの個人レッスンも受けていたからだ。
何を学ぶのか?
ひとえに
“私の先生”と、どうやったらうまく踊れるか?
男性教師から受ける注意の解釈が主なレッスン内容だった。
K美のカラダは非常にリキミが強かった。
インナーマッスルの使い方などを教えると、
チャンと反応できる優れたボディを持っているにも関わらず、だ。
K美のカラダは、
その男性教師用に仕立て上げられていたのだ。
もっと言うならば、その先生でないと踊った気がしない。
だから、どうしても男性に対する要求がキツクなるワケだ。
「ワタシ、あまり、他の男性とは踊りません」
とK美は言う。
“私の先生”以外でよく踊るのは、
グループレッスンの男性ぐらいとか。
ほんのたまにパーティにも行くという。
「ただ、レベルの高い人が集まるパーティにしか行きません」
パーティ会場で出会ったばかりの人に、
文句を言ったり、注文をつけたり・・はないようだ。
では、今回のT氏への態度は、なぜ?
短期間であるとはいえ、
自分のダンスに深く関わってくる“ダンス・パートナー”だと、
ココロとカラダが判断したからかもしれない。
となると、自動的に、
基準は男性教師になってしまうだろう。
「私の先生のように踊って欲しいのよ・・・」
発言が飛び出す理由だ。
おそらくは無意識に
“私の先生”を相手に求めてしまう
相手の男性にとって、これは非常に迷惑なことだ。
その上、さらに迷惑なことに、
K美自身が男性教師から受けている“屈辱”を
そのまま、相手に与えているようなのだ。
「床をもっと踏んで」
「顔を上げて」
「肩を下ろして」
K美の頭の中にインプットされた“注意・注文”が、
これまた自動的にアウト・プットされているという状態なのだ。
さて、K美の口からは常に、
“私の先生”の話が飛び出してくる。
どれほどな屈辱を受けても、
その男性教師のレッスンを辞める気はないようだ。
このままでは、
自分のダンスが決して上手くならないとわかっていても?
答えはイエス。
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