fc2ブログ
初めての方へ  目次  エクササイズ&プラクティス集  

テーマ別インデックス  Real Junko Voice目次  

読者限定ワークショップ




特別シリーズ 
社交ダンスを教えるということvol.8 

そんなはずじゃなかった・・・

パートナーシップ違約行為①


シリーズに戻ろうとしたのですが、
ふと立ち止まり
「今年最後の特別シリーズ 社交ダンスを教えるということ」
を書こうと思い立ちました。
してテーマは・・・ナニナニ

「パートナーシップ違約行為!?」

第1回目タイトル
そんなはずじゃなかった・・・
エラク穏やかでなさそーな感じではありますが。
ひょっとしたら、
「あ~、わかるわかる、他人事ではないわ」
な内容かもしれませんよ。
では、ドーゾ。


ある日、携帯が鳴った。
表示を見る。
ん? コレは・・・非常になつかしい生徒サンの名前。
不思議に思いながらも出てみると、
果たして彼女、Sさんだった。
「実は、新しい相手が見つかったんです!」

して、カップルレッスンを受けたい、という。
声が弾んでいる。

Sさんが、以前組んでいた相手と、
カップル解消したのは2年くらい前のこと。

ワタシは、二人の組み始めから解消に至るまでを、
先生という立場からずっと観察してきていた。

ビギナーであったSさんを、
男性が一生懸命教えるという

亭主関白タイプのカップルであったが、

最初は非常に上手くいっていた。
彼女は彼を通してダンスを知り、
楽しさに目覚め・・と言う過程を歩んだのだろう。
レッスンの合間にSさんはよくこう言っていた。
「彼には、ホントウに感謝しています。
彼に出会えたおかげで、
こんなに素晴らしい世界がアルことを知ったんですもの」

しかし、その次の段階、
つまり、
彼女自身が“ダンスが上手くなりたい時期”を迎えた途端、
二人の間がギクシャクしてきたのだ。

ある日、突然、
「解消しました」
と連絡が入った。

Sさんは電話の向こうで泣いていた。
「私のワガママかもしれませんが・・・
踊りたいダンスの方向性が合わなかったんです」


そして、こんな風にも。
「ダンスって、傷つけ合うものなんだなぁって。
なんだか、もう、イヤになりました」

ダンスそのものも辞めるような言い方であった。

ソレなのに・・・新しい相手が見つかった、か・・・。


レッスン初日、
A氏を紹介するSさんは、幸せそうだった。
共通の友人を通して知りあった二人、
ファーストダンスで、お互い “一目惚れ”したという。

「価値感がうれしいくらいに、一緒なのです」
以前の彼とは全く違うということを強調するかのように、
Sさんは言った。

A氏も続ける。
「ダンスは必死になって踊るものではない、と思います。
ダンスはあくまで“楽しむ”もの。
だから競技会に興味はありません。
でも、将来は、観ている人に
影響が与えられるようなダンスが踊れるようになりたい。
そのためにも
彼女と二人で、自分たちにしか作れない
ダンスの世界を作って行きたいのです」


豪語するA氏の横で、
シットリたたずむSさんの瞳はワタシにこう語っていた。
「ね、ステキでしょ、この人」

彼女のカラダ全体から発せられるのは、

“ダンス恋愛”特有のオーラ!?

“ダンス恋愛”とは、ワタクシの造語だ。
社交ダンスから派生して生まれる“恋愛的感情”のことだ。
普通の恋愛同様、さまざまなパターンがある。
自分を気持ち良くさせてくれる相手のことを、
“カラダ”が好きになってしまうという、
生理的現象が始まりであることが多い。
また、
ダンスへの価値感が同じという“仲間意識”から発展するケースも。
さらには、
“ダンスそのものに恋をする”感情とゴチャ混ぜになり、
複雑化スル傾向あり。
いずれの場合も、
浅いココロの部分まで支配を受けるから、難儀。
ただ、深いココロは伴わないため、エゴがキツク出る、
ダメだと思ってもなかなか離れられない・・

問題が多く伴う、危ない現象でもある。

ホンモノの愛には発展しにくい。


ワタシは手放しでは喜べなかった。
出会ってまだ1ヶ月少々か・・・
ウーン、ヤバイんでないの。
二人とも50代前半、イヤ、もっと若い?
たぶん、家族もアルだろうに。
イヤ、ひょっとして、独身かも。
全く、分からなくなってきた。
しかしどうであっても、
非常にプライベートかつ「神聖領域」だと解したワタシは、
遠くから観察に徹するように切り替えたのだ。

予想に反し、滑り出しは好調だった。
お互いのダンス人生成就を支援しあえる
パートナーシップのようにさえ感じた。
時折のふるまいの中に
“ダンス恋愛”を垣間見ることはあったけれど、
さほど気になることもなく、
むしろ、仲良くレッスンを受ける姿には好感が持てた。

クリスマスにワルツのデモを踊りたいと、
Sさんが言い出した。
A氏は快く同意し、目標が決まった二人は猛練習を開始。
Sさんは目の色が変わり、ダンスも飛躍的に向上した。
当日は、
かなりベテランのA氏に支えてもらっての演技になったものの、
アクア・ブルーのドレスに包まれたSさんは輝いていた。
拍手喝采。
思えば、コレが最高の時だったのだろう。

ある日、Sさんから電話が入った。
泣いている。
「A氏ともう組みたくない」
理由を聞くと、
「不誠実だ」
他の女性を自分のパートナーのようにして
踊っているA氏を見かけたというのだ。

「ワタシは、A氏以外の男性とは踊らない。
変な癖がつくとイヤだから。
ソレなのに・・・」

嗚咽を漏らしながらの訴えだ。

A氏は組み始めの頃、Sさんにこう話したというのだ。
「僕にとって、ダンスはハートで踊るものだから、
ココロが合わない女性とは楽しめないし、踊れないんだ」


A氏が踊っていた女性は、
どう見ても自分より若く、テクニックも上。
Sさんは非常なショックを受けたのだ。
また、運の悪いことに、周りの人の声も耳に入ってきたという。
「あのカップルお似合いねぇ。
キレイに踊っているわ」

Sさんは悩んだ末、A氏に問い詰めた。
嫌われるのを覚悟だった。

と、A氏は
「昔のサークルでの“教え子”だ」
と、あっさり。

そして、
「たまに会うと『教えてぇ~』って寄ってくるんだ。
その子、今は競技で活躍してるから、
僕なんてつまらないだろうに。
参っちゃうよ」

と、うれしそうな表情でもある。

言い知れぬ衝撃に見舞われたSさん、
「ワタシ以外の人と踊っても楽しいの?
ココロが通い合わない相手とは踊れないって言っていたじゃない」


すると、
「アノ子は特別なんだ」
それ以上は取り合ってくれなかったという。

「あんな人だとは思わなかった・・・」
搾り出すような声だった。
ワタシは黙って聞いていた。


ソレからまもなくして
Sさんからまた連絡が入った。
「A氏と別れることにしました」

その後に続いた言葉を、ワタシは忘れることができない。

「ダンスって、やっぱり、傷つけ合うものなんだなぁって。
なんだか、もう、イヤになりました」



     続く第1065話へ



※Real Junko Voiceはお休みです。



いつも 応援クリック ありがとうございます。
      ↓ ↓ ↓
   
人気blogランキングへ
とても励みになっています。(ジュンコ)