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特別シリーズ 
社交ダンスが教えてくれたこと 人間美学そして哲学vol.6 

感受力・変化力の目覚め

ダンス力を生き・活き力に転用しよう ②


以下は、
ある生徒さんの実話に基づくお話である。

京子さん(仮名)は、困り果てていた。

「ワタシ、
もうダンスはソコソコな年月、
やって来ているんです。
でも、最近
『あれ?ワタシ、
ナニを一体やっていたんだろう
ダンス、チットモ上手くなっていない』
って気づいてしまったんです」


京子さんは、小柄で細身。
歳は、50代半ばといったところ。
色白でかなりの美形、
でも、その笑顔はナーンか冷たく
彼女を取り囲むオーラは、
近寄りがたい雰囲気をはらんでいる。

初回レッスンの
“先生と一緒に踊る・診断”前
「どうされたのですか?」
という私の問いに対し、
京子さんはしばらく
キレたようにしゃべり続けたんだ。

「個人レッスンをずっと習っていたんですが、
あるときその先生から
『アンタはジルバがいちばん下手や』
って言われました。
どういう意味ですか?って聞いたんですが、
明快な答えは言ってもらえませんでした」


「ジルバって、パーティダンスですから、
男性のリードをフォローするのが
下手だってことかな?と解釈したんですが。
そういえば、踊りに行った先で、
一度踊ってくださった男性からは、
2度と誘っていただけることなく、
気がついたら、
壁の花になっていることが多いってことに
気がついたんです」


「見ていると、
私よりずっと初級のような動きをしている
女性がバンバン誘ってもらってる。
私はひょっとして(男性にとって)
すごく踊りにくいんだろうか?
と思い始めました」


「ちょっと知り合いになった男性に、
自分のダンスについて
思い切って聞いてみたんです。
すると
『お上手ですが、
一緒に踊っていてあまり面白くない』と…。
ショックでした」



京子さんは打開策として、
個人レッスンの回数を増やし、
そのとき習ったテクニックを、
自宅で懸命に
シャドウするようになったという。


「そのうち、
シャドウがだんだん楽しくなってきました。
チャチャチャのステップとか
シャドウでやっていると
すごく踊れたぁ~という気になるんです。
でも、踊りに行った先での効果のほどは、
ハッキリ言ってよくわかりませんでした」



友人の女性に助言を求めると、
驚くべき答えが帰ってきたという。


「『踊っているとき、
ものすごくつまらなそうな顔をしている。
一緒に踊っている男性が、
気分を害するんじゃないかなって、
いつも見ていて気になっていた』
なんて言うんです。
私は、それなりに
楽しく踊ってるつもりだったんですが。
コレも、ショックでした」



京子さん、
眉間にくっきりシワを浮かべ、
辛そうな表情だ。

口頭による情報収集の後、
私は“診断”を始めた。
ソッと、ホールドをしてみる。
あ・・・
思ったとおりだ。
イヤ、それ以上かもしれない。 
京子さんのカラダは、
他人に触れられているにも関わらず、
チットモ

何にも感じていない!!??

触れた部位、
手や、腕や、背中が、少しも変化しないのだ。
もっといえば、呼吸も感じない。
失礼だが「生きているの?」
そんな言葉が口からでかかってくる。

音楽をかけた。
個人レッスンの先生から
「最も下手だ」と言われたという、ジルバだ。
ベーシックを踊る。
う~ん・・・
音楽にナンの反応も、ない。
もちろん、
私に合わせようという気配も、ない。
ただ、機械的に足でステップを刻み、
アンダーアームターンという“作業”をこなし、
アメリカンスピンでは、
高速回転で回ってから、
次なる、こちらからの
“指示”を待っているかのようなそぶりはする。
しかし、
その“指示”を受け取るや、京子さん、
ただただそつなく“こなす”だけ。

空しい・・・

種目をルンバに変更した。
音楽に全く関係なく、
ヒップを大きく振り始める。
足は美しく見せようとするせいか、
リキミはじめ
腕は(たぶん習ったとおりだろう)
ヒジから使って・・・と懸命だ。
ファンからアレマーナ。
シャープに動こうとして、
リキミに拍車がかかる。
その腕は硬く、
まるで私に敵対しているかのようだ。
チラ、と表情を観る。
口をグッとふさぎ、

不満?不安?チョイ傲慢?

なんともいえないフィーリングだ。
彼女の美形がかえって
悪いように作用しているかのよう。
ファンポジションでの足の踏みかえは
相当練習を積んだのだろう、
グィッとやろうと、これまた懸命。
ソンナコンナのアクションが妙に攻撃的で、
これまた、空しい・・・

いつもなら、
ブルースかスローかワルツの
“診断”もするのだが
今回はその必要なしと、決断した。
診断は、終わった。

京子さん、
踊り終わるまで、
一度も崩れなかったそのカタイ表情に、
若干、笑みが戻ってきた。

「ドウでしたでしょうか? 
私のダンス・・・」


その目は私に問うてくる。



私は言った。
「楽しかったですか?」



京子さんは驚いたような表情で、
「え、まぁ、
あの、一生懸命でした」




私は言った。
「踊っている間、
ナニを感じていました?」



京子さん、へ?という表情だ。
で、何度も口ずさみながら、
頭をひねっている。
「何かを感じていたかですって!?
感じている?感じている・・・」




そして、彼女は突然声を上げた。
「わたし、
ナニも感じていないわ!!」




      続く 第699話へ



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