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特別シリーズ 
社交ダンスを教えるということvol.5 

初歩に戻ってやり直したい・・・

優先順位 ①


日曜日の、昼下がり、
とあるダンス・フロアーにて
そのご夫婦は、ワルツのシャドウをしながら、
レッスンの始まりを待っていた。

私は声をかける。
「今日はナニをされます? 
ワルツかな?」



と、二人はソレに答えず
急ぎ足で、
こちらに向かってやってくる。


ん?

いつもとはなんか様子が違うなぁ。


果たして、ご主人
チョイ薄くなった髪を指でかきあげながら、
ハニカンダような微笑みを浮かべ
「先生、今日はひとつ
お願いがありまして」



ハイな、ハイな、何かしら?
所属しているサークルでデモをするから、
それ用のルーティンを組んで欲しい?
それとも、
あんまりやったことない種目、
例えばジャイブとかをやりたい?

ソンナコンナの想像をみごとにくつがえす、
次の言葉に、先生はビックリだ。


「最近、もう一度、
初歩からやり直さなアカンナァ
(やり直さないとダメだなぁ)と
つくづく思うようになりました」

「それで申し訳ないんですが、
ワルツのまったくの
基礎から教えていただきたいんです」



申し訳ないなんて、ちっとも!!
イヤイヤ、ソレって、

素晴らしいことじゃないですか。

ホンマ、拍手モンですよ。
だって、そのご夫婦
年齢はカレコレ60歳半ば。
ダンス歴は、22年くらいかな?
今でこそお友達のサークルを手伝ったり、
といった活動もしてはいるが、
ソレまではずっと
「二人で仲良く踊ってきました」
ってだけで、
競技経験も、もちろんナシ。
「夫婦でユックリ踊って楽しむのが、
晩年の目標です」

という、
フツーのダンス愛好家・・・なんだもの。
それなのに、
今から、ド基礎に戻りたいだなんて、
その、熱き向上心、
エライ、エライ!
と、感心しきりだったんだけど、
実は、ワタクシ、
少々気になるところもあったわけ。
ソレは、
なぜ、そういう心境、
つまり

初心に戻りたいと

思うようになったのか!?


について。
その理由が、
何かスペシャルにあるんじゃないかと
思ってね。

すると、ご主人、
その理由らしきモノを口にし始めたんだな。
「エラそうなことを言うみたいですけど、
“本質”みたいなものを
もっと知りたくなったんです」



「本質・・・??」
と、ワタシ。
アヤヤ、
なんだかすごい話になってきましたぞ。


ご主人は、
穏やかに微笑みながらこう続けたんだ。
「なんか(なんだか)、
ただただ一生懸命、
踊っているだけだと、
楽しくなくなってきたんです。
気が付いたら、
イラン力ばっかり入っていて、
ホンマに、
コレでエエのかなぁ?
と、思うようになってきたもんで・・」



私は、胸が急に
ザワザワし始めるのを感じていた。


奥様も
「私なんかねぇ、
カラダもこんなやし、
もう歳やけど」

(奥様、腰の具合いが
あんまり良くないんだな)
と、苦笑しつつ、でも、
「ココまで教えてもらったんやから、
もうちょっと、
がんばりたいなって思って」



「ココまで教えてもらったんやから」
ソウ、奥様は言った・・・
その何気ない言葉に

チクッ!と、

私の胸の奥が反応したんだ。
と、次の瞬間、
あ痛タタタタタタ・・
心の奥にしまっておいた、
古傷のようなものがウズキはじめ・・・。

「ココまで教えてもらった」 
奥さんはその言葉によって、
先生である私に対する
感謝の気持ちを伝えたかったのカモ、
なんだけど、
私の方からしてみたら、
「うひゃぁ~、とんでもない!!」
ってこと。
そして、心から、こう伝えたい。
「申し訳ありません!!」
そして
「ホンマ、ありがとう」 
さらに
「チャンスをくださって、
うれしい。
挽回(ばんかい)させていただきます!」

「一緒に初心に戻ってがんばります」
 
てな、言葉をぐっと飲み込み、
私は、二人にこう伝えたんだ。
「ワルツの基礎、いいですねぇ。
ではさっそく、やりましょう・・」



さて、さて、読者のみなさまへ
白状しちゃいます。
上記、ご主人が言った言葉の中に
「ただただ一生懸命、
踊っているだけだと、
楽しくない」
「気が付いたら、
イラン力ばっかり入っている」

って、あったでしょ?
コレって、
チョイ誇張して言うなら、
すべて、

この“ワタシ”のせいなんだ。

正確に言えば、
“かつての、
未熟モノ・ジュンコ先生と
そのリーダーであった人”のせい
ってことになるんだけどね。


さて、意味を説明しよう。

このご夫婦との付き合いは、
新米教師ジュンコの奮闘時代
そう、スタジオ勤務し始めた頃からだから、
もう、22年になるんだな。
生徒さんの中では、最長だ。

「そうなの!?
花村さん(ご夫婦の仮称)、
ジュンコ先生について
そんなに長いの?」

と、ナーンにも知らない
最近入られたばかりの生徒さんが、
花村さん夫妻に向かって言うと、

「いやぁ、
デキのワルイ生徒でねぇ。
先生には申し訳なくって」

なぁんて、
ものすごく謙遜されるんだけど、
そのやり取りを聞いているワタシ、
マジ、汗、かいて、
ちっちゃーくなってますわ。

花村さん夫妻は
デキの悪い生徒さんでは決してなく、
ソレを言うなりゃ、
(デキが悪かったのは)
先生であった、私でしょってこと。
で、
かつてのジュンコが、
もし、今のように教えることができたなら
花村さん夫妻は、
もっともっと
ダンスが上手くなっていただろう。
コレは否めない真実なんだ。
さらに言えば、
花村さん夫妻のダンス人生は
今とは違うものになっていたかもしれない…
そんな風に思っても、
仕方のないことでしょって、
言う人がいるかもしれないけれど、
私、個人的に
こういうことに対し
“反省”“思い返し”がないと、
絶対、ダメだと思っている。
なぜって
コンナ反省って、
自分自身でしかわからないし、
できないモンだからね。

誤解のないように言っておくと、
じゃ、今のジュンコ先生が万全か?
というと、それも違う。
言えるのは、いつだって、
先生としても、
人間としても、
進化の途中だってこと。
そして、大切なのは、
進化し続けること・・・。

さて、ココから
今回の「社交ダンスを教えるということ」
のテーマ、
本題に入っていくわけなんだけど、
この花村さん(のような方)を通して、
みんなと一緒に、

① かつての未熟モノ・ジュンコ先生と
今のジュンコ先生の教授法、
どこがそんなに違うのか?

② 今からの挽回(ばんかい)は、
ホントウに可能か? 
具体的にどうすることなのか?


を見てゆきたいんだ。



      続く 第600話へ



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