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特別シリーズ 
社交ダンスを教えるということ vol.4 

格差があるカップルのレッスン

~カップルレッスン修行 ⑫~



以下は、

片方のみが自立

もう片方は依存しているタイプ


の2つ目のパターンを見てみよう。

紀之美佐子(どちらも仮名)は、
50歳半ばのご夫婦だ。
紀之のほうが先にサークルでダンスを始めていた。
すぐに美佐子にも勧め、
しばらくは一緒にやっていたが、
家庭の事情(母親の介護など)などの理由で
美佐子は、
しばらくダンスを離れることに。
それから約10年、美佐子は紀之の支援のもと、
ダンスを復活した・・・


美佐子
「久しぶりに見に行った
サークルのパーティで、
あるご夫婦が仲良く
ワルツのデモを踊られるのを見て、
あ、いいなぁって・・・。
私もあんな風に、
主人と一緒にデモを踊りたいなぁ、
急にそんな思いがし、
またダンスをやりたくなったのです」


で、今現在は、
紀之が美佐子の“コーチ役”
といった関係のようだ。


さて、初回レッスンのお題は・・・


紀之
「あの、ワルツにしようか
ルンバにしようか迷ってるのですが」


「ソレはナゼかしら?」


紀之
「上手くいけば、二人で一度
デモに挑戦してみたいのです。
最初はどちらがいいかな?と思いまして」


こういうときは、
先生側の意見を言う前に、
必ず、

パートナーの意見も求める

ようにする。


すると、


美佐子
「私はどちらでもいいんですが・・・
え?好きなほうですか?
ソウですねぇ、
好きなのはルンバかな」


この時点で、
もう一度紀之の意見も聞きながら、
「では、ルンバでいきましょうか」 
と、決定するわけだが、
もし、どちらも好きで・・・となっていても、
ルンバを薦めるケースが多い。
また、上記の二人の事情を聞いた後、
「初めてデモに挑戦したいのですが、
何の種目がいいでしょう?」
または
「最初、何の種目から
レッスンを受けたら良いか、迷っています」
と、きたときも
ワルツより

ルンバを薦めることが多いのだ。

なぜなら、
ワルツなどスタンダード種目に比べて、
ルンバなどのラテン種目は
組み方に自由性があり、
お互いの自立感がわかりやすく、
また、ダンスにおける

男女の関わりに対する

意識を学びやすい
からだ。

その中でも、
ルンバはイロイロな意味で
ダンスの基礎が学べる種目でもある。
(第451話参照)

もし、男性が中・上級で、
女性が初心者または、
どちらも初心者というケースなら、
特におお薦めだ。
(生徒さんがスタンダード好きで、
ラテンはドーモという感じなら、
もちろんこの限りではない)


では、
紀之と美佐子のレッスンに戻ろう。
ルンバという種目を利用して、
それぞれが自立するという関係、
その上での、
男性の役割、
女性の役割を学習しましょうか
・・・と
サラリ、(種目の)選択理由、
目標を二人に説明し、レッスン開始。


さて、この時点で
紀之が持つ課題と美佐子の持つ課題が
別々にあることを、
先生側は認識しておいた方が、
迷いの少ないレッスンができるだろう。

紀之の課題・・・
ある程度の自立は果たしているだろうが、
初心者である美佐子と踊ることによって、
自ら未熟なところが際立ってくるはず
ゆえに美佐子へのリードの学習が、
主目的ではなく、
まず、“自分”のことに徹し、
弱点を発見、
そして変化させ、

自立しているようで

実はソウではなかった

といった部分に

自立を働きかけること


そうすることが、結果、
美佐子へのリードにつながるだろう。


美佐子の課題・・・
自分で音楽を感じ、
自分の床を感じて踊ることが大切。

自分のやるべきことを把握

していく。
その中で、男性との係わり合いも
感じていくようにする。


音楽をかけ、
知っている範囲での
ベーシックを踊ってみてもらい

先生側はビジュアルによる
情報収集を開始する。


紀之さん、
ずいぶんアセって踊っているわね。
美佐子さんを一生懸命
サポートしようとしているのはわかるけど、
でも、その気持ちが強い分、
自分のことはずいぶんお留守だし、
動きもギクシャク・・・
カラダがすごく力んでいるし、
アラ、音楽も外しているわ。

美佐子さんは、踊るという感じではなく、
ただただ、動いているという感じね。
自分でこんな風に踊ろうという
率先した気持ちは感じられないわ。




ダンス披露の後、
本人たちから自分たちの問題に
発言してもらうようにする


「何か、聞きたい
(質問したい)なぁというところ
ありますか?」


紀之
「イヤ、コレでいいのかなと・・・
家内にちゃんとリードできているのか、
よくわからないのですが」


この時点で、自分のことではなく、
自分より未熟な(ハズの)
パートナーについての話になり、
「彼女のフォローはコレであっていますか」
的な相手方向の質問にならなかった点では、
大いに合格だ。


美佐子の意見も促す。


美佐子
「私も、コレでいいのか悪いのか、
実はあんまりよくわからないのです」

さらに聞いていくと

「音楽にもあってるかどうか・・・。
踊りながら音楽が
耳に入ってこないナンてダメですよね?」


初心者である美佐子のほうが、
あまり“何も”知らないため、
ダンスに対する捉え方の純度
紀之より高いかもしれない。
で、
より本質的な部分に
疑問を感じていたりするため、
貴重な意見を持っていることが多い

ということを、
押さえておいたほうがいいだろう。

テクニック・経験etc.に差のある
カップルのレッスンにおける最大のポイントは、

先生側が、いかに、

その差を乗り越えるか!?
という点だ。

そして、
当の本人たちにもソッチ(二人の格差)に
目を向けさせることなく、
それぞれに有意義な時間を過ごしてもらうには
ベテランはベテランなりに、
ビギナーはビギナーなりに、
学んでいける
普遍的な課題を提示し、
取り組んでもらえるように
仕向けられるか
どうかにかかっている。

今回の場合は“音楽”だろう。


先生はいう。
「美佐子さん、
いいところに気が付きましたね!
ふたりとも、音楽、
聴こえていますか?」

そして
二人に音楽の重要性を伝え、
紀之には、
まず正確に音楽を取れることが、
女性に対する信頼を得ることにもつながり、
立派なリードにもなっていくことを。

美佐子には、
女性も自分でしっかり音楽を聴き取って、
自分でスタートを切れるようにすること
踊り続けている間もずっと、音楽を感じていること
を伝え、
実践に移る。
比較的わかりやすい音楽を
いくつか順々にかけ、
二人で音楽をとる練習
だ。


そして、
男性が女性に(またはその反対も)
ビギナーがベテランに(またはその反対も)
合わせて踊るのではなく、
まずそれぞれが音楽に合わせて、感じて、
踊るんだということを
実感してもらうようにする。

そして、
ベーシック、アンダー・アームターン、
ニューヨーク、ハンド・トゥ・ハンド
といった基礎フィガーのみを、踊るように指示。
(フィガー名は白板などに書きだすとGOOD)


直接関わっている“手”は

柔らかく力を抜きながら


(相手が音楽を聴こえやすいように・
また表現を邪魔しないため)
それぞれが、

カラダを使って音楽を表現する・・・

それがダンスなんだ


という認識を持たせていくようにする。


特に、美佐子には、
「細かいところは
(先輩である)
ご主人が受け持ってやってくださるから、
(初心者である)
美佐子さんはまずは大船に乗った気持ちで、
自分のことのみに専念していいわよ」
とアドバイス。


紀之
「ソウ言えば、
自分が踊るって言うことを忘れていました(笑)
家内のことばかり気になって・・・。
ソレにダンスは音楽表現である
というコトも・・・」


美佐子
「カラダが自由に動くって楽しい!
ルンバがもっと好きになりそうです」

に、それぞれなったようだ。


紀之にとって・・・
美佐子との関係を利用し、
普遍的テクニックの思い返しができた。

美佐子にとって・・・
紀之との関係を利用し、
男性のことを全く気にせず、
まずは自分のことのみに専念できる状況で、
学習できた。

めでたし、めでたし。


ポイントは、

どのようなレベルでも

起こりうる問題は、

ほとんど同じであると認識し、

格差を乗り越え

むしろ利用できる関係を生む

レッスンを工夫する。




イヤイヤ
長い間のお付き合いありがとう~~~!

今回取り上げました、カップルは
比較的年齢の落ち着いた人たち
競技選手ではない
・・・のパターンでしたが、
それ以外のカップルに関しての
“修行レポート”はまたオイオイね


次回より、ルンバ・シリーズに戻ります。



      続く 第500話へ



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