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特別シリーズ 
社交ダンスを教えるということ vol.4 

依存関係カップルのレッスン

~カップルレッスン修行 ⑨~



以下は、

二人どちらも自立できていない

依存関係にあるタイプ
のレッスン例だ。

正夫恵美(どちらも仮名)
年齢はどちらも40歳半ば。
ダンス歴3年弱のまだ初心者だ。
サークルで知り合い意気投合、
一緒に練習を始めるようになって2ヶ月あまり。
最初は仲良く練習していたが、
本格的に取り組み始めてから、
チラホラ問題が・・・。

恵美
「やりにくいところがあっても、
ドッチが悪いからソウなっちゃうのかが
ぜんぜんわからない。
お互い言い合いになって、
練習にならなくなるコトもしばしば・・」


さてさて、そんな二人の、
今日のレッスンのお題はタンゴだ。

まずは、
音楽をかけ、踊ってみてもらう

(先生側は)
この時点よりビジュアルによる
情報収集開始
だ。


先生、ココロの中で
『おっと、のっけから音楽を外しているよ。
(レッスンで)緊張しているからではなく、
コレはどうも日頃からのようね。
正夫さんのホールドがものすごく力んでいる。
右肩で恵美さんを圧迫しているわ。
恵美さんも、キレイにカタチを作ろうとして、
カチカチになっているわね。
ものすごく重そう・・・。
自分で自分のカラダを動かしていないんでしょうね』



二人は、サークルでやっているという
アマルガメーションをやって見せていたが、
息が合わず、途中で止まってしまう。
顔は笑っているが、
お互いがお互いのせいで、
止まっちゃったモンと
思っている様子アリアリだ。
少し緊迫したムード・・・


(先生は)
穏やかに微笑みながら、
二人に近づいていく。

「ドウですか?
いつもどおり踊れましたか?」
二人とも「イアヤァ・・・」
といった感じ、少し空気が和らぐ。
少し、間をおいて

「何か問題はありますか?」


正夫
「問題、と、言えばみんな問題です」


恵美
「ドコが問題か
ハッキリわかんないんですけど、
踊りにくい・・・」


「では、ドコが踊りにくいですか?」


ココで(先生側として)大切なのは、
色んな角度から質問をするなりして、

カップル本人たちから

自分たちの問題について

発言してもらうように仕向ける


ことなんだ。

自立できていない、
依存関係にあるタイプ

の人は、いわゆる
“自覚”が少ないのが特徴だ。
ゆえに、自分たちのドコに問題があるのか
“感じ取ること”
そしてソレに
“言葉を与えること”が難しいハズ。
だからと言って、ココで先生側が見たままに
「男性はホールドが固いし、
女性は自分で立てていないし・・・」
と、いっぽう的に問題を並べるや、
先生と生徒の間にまで、
ミョーな依存関係を生む可能性があるんだな。
つまり、
「先生のレッスンさえ受けていれば、
問題を見つけてもらえるし、勝手に上手になる」
と錯覚を起こし、
自ら問題を見つけ出す
感受性、および、洞察力
ソレを口に出して説明する
論理性、および、客観性
が、育たなくなるってこと。
コレは絶対にNGだ。
(言い換えれば、自分たちがどうなっているのか、
ドコが問題なのか
そして、その二人の問題に対して、
自分は何をするべきか
が、正しく導き出せるようになれば、
先生は要らないカモだけれどね)


さて、ポツポツであるが、
恵美が
“踊りにくいところ”について話し始める。


恵美
「スタートの時から、
ガバって突っ込んでこられるように思うんでス。
それでバランスを崩しちゃう」


サッと、正夫の顔色が変わる。
え? 僕、そんなことしてる?という疑問とともに、
自分も恵美に“何かされていたのでは?”という、
記憶をたどり始め、果たして・・・口を開いた。

正夫
「いやぁ、僕の方から言わしてもらえば、
彼女のホールドがきつくって、
締められてるような感じで、
それで(突っ込むのでは)
そうなっちゃうと思うのですが・・」


恵美
「え~、私、そんな締めてるかなぁ?」
(ひとりごとのように)


正夫
(先生に向かって)
「いつも、練習終わったら
肩が凝ってるんですよ」


恵美
「あ、それから、まだあった。
正夫さん、ずっと、
左に傾いてるような気がして・・・
(正夫の)
右肩が上がってるからかもしれないけど」


正夫
「だって、左のほうに曲がるのは、
タンゴの特徴だろ?」


恵美
「???」


・・・・・・サマザマな意見が出てくるが・・・
さぁ、この辺りは先生側の忍耐のしどころだ。
場を和やかにし、
意見を出し合えるムードを作り、
お互いの言い分の中で、
意味の通らないものであったり、
的外れのものであったりするものは、
相手にわかりやすいように翻訳するコトも
先生の役割だ。

例えば、
「今、正夫さんが言ったのは、
たぶん、タンゴウォークのことだと思うんだけど、
ソウかしら?」という風に。
まぁ、しばらくは、
どんな意見であってもOKという気構えで、
ファシリテーター(水先案内人・媒介人)に徹するんだ。
お互いの言い分の中には、
ケンカに勃発しかねない要素を
はらんでいるものもあるだろう。
実際、イヤァな空気になってしまうコトも多い。
しかし、このお互いによる
“相手への問題提示”の時間はとっても大切なんだ。
なぜって、

まだ自覚を持てないもの同士だが

相手のことは“よくわかる”
ハズだから。

そして、よくよく見れば、
相手に対して問題アリと言っているところは、 
実は、絶対、自分に問題アリの部分だから・・・。
つまり
自立できていない、
依存関係にあるタイプ
の彼らは、

相手について観察し、発見し、

その問題を

あぶりだすという作業によって

実は、自分を知っていく


・・・という学習中なのだ。

もし可能なら、
白板を使って、お互いの言い分、
ならびに問題、
踊りにくいところを書き出しても良い

だろうね。

このタイプの人たちにとって大切なのは、
二人の抱えている問題が
① 明らかになっているか?
② 二人の問題として共有できているかどうか?
なんだ。
お互いが、またはどちらかだけでも
「私が踊りにくいのは、あなたのせいで、
あなたが踊りにくいことについては、
知ったコッチャない!」
なんていう、
気持ちを助長するようなレッスンは絶対NG!
そのためにも、
先生は絶対に“中立”でいるべきなんだな。
つまり、正夫側にも、恵美側にも、つかないこと。
ドウ見ても、正夫のほうが悪いでしょ? 
みたいな、スタートの突っ込みであっても、
回避できる余地が女性側にあるし、
それゆえ、恵美にも問題がアルっていう
自覚を持たせることが重要だ。


さて、問題がだいたい出揃ったところで、
先生は選び出さなければいけない。
多くの問題の中から、
「コレを解決することで、
他のも一緒に改善に
向かうことができるであろう」と思う、
キーになる問題を一つ選択し、
ソコを優先的にレッスンする
のだ。
ここでの、ポイントは、

本人たちが自覚を持ちやすく

比較的改善しやすいモノを選ぶ
こと。

この場合は
“スタート時のホールド”だろう。

先生が、正夫、恵美それぞれと組んで
状況を把握する。
そしてできるだけ、論理的に、
ある意味機械的に
事実を告げるのだ。
「正夫さん、凄くカラダに力が入ってますね。
右のホールドで締めてきますし、
右肩も上がっています」
「恵美さん、左のホールドで
男性のホールドを締め上げてますよ。
カタチはキレイですが、
凄く力が入っています」

で、次に、二人のホールドをしてるときの
意識を尋ねるんだ。
つまり、ナニを思ってまたは、
ナニに気をつけてホールドをしているのか。
ソコに気持ちを向けさせることで、
ナゼ、そのような
リキミを生じるホールドになっているのか、
自覚を持つことができるからだ。
ココも最初は
「特に何にも考えていません」
となる可能性は高いが、
イヤイヤ実は、
決してそんなことはナイ!のだ。
必ず、
“何かを思っている”
“何かをしようと思っている”
ハズなのだと先生側は認識しておくこと。
で、非常に根気のいる作業だが、 
無意識を意識化できるようになるよう手伝うんだ。
(ただし、生徒さんが困り果てているようだと、
方向転換すべし。
話題をどうやって問題を解決していくかに
切り替えること)


正夫
「ホールドが落ちないようにと心がけてます。
それに、ナンかあせってますね、そういえば・・・。
すぐにスタート切らなきゃとか、
女性をリードしなきゃって思ってます」


恵美
「グッと左ひじを張って
キレイに見せようと思っています。
それから、
男性がスタートを切るのを待ってますね」


ココで初めて
先生のレクチャー(講義)にはいるわけだが、
この時点で、
二人の真の問題点は
先生の中ではある程度“把握済み”

であることが大切だ。


真の問題点

正夫・・・自分のカラダの動きが
コントロールできないにもかかわらず、
女性を何とかリードしようと躍起になっているようだ。
それが全体的なリキミの原因に。

恵美・・・キレイに見せようという気持ちが強い。
動きは男性にお任せという感じ


二人を前において実践を交えながら話始める。
まず、ホールドの力は絶対的に抜くこと、
ゆえに、カタチを作る必要もないことを告げ、
そしてそのわけもキッチリと話をする。
で、まず、スタートにおいて大切なことは
落ち着いて、音楽を聴く体勢を作ること。
そして、女性も自ら
スタートを切るという自覚を持つこと
・・・と説明。
正夫には、今の段階で、
特にリードをしようとは思わず、
自分が楽に床に体重を乗せているか、
音楽をしっかり聴いているか実感の方が重要であり、
そういう本質的なテクニックに
専念することのほうが、
はるかに、女性へのリードに
つながるのだということを感じてもらう。

で、実践で、体験してもらう。

結果

正夫
「そら、このほうがずっと楽です。
楽しいですよ、
音楽も聴こえるし」


恵美
「私だって、
自分でスタートを切ろうと思ったら、
気持ちが全然違いますね。
今まではカタチを作ってジーッとしてました」


正夫
「相当、ガンバッテいたものなぁ。
だからバランス壊して、
突っ込んでいってたんだなぁ。
イヤイヤ、申し訳ない」


恵美
「私だって、重かったでしょ?
正夫さんに頼りきっていたからね、
ゴメンね」
ってな雰囲気になれば、
ハッピー・ダンスレッスン!!大成功だ。


ポイントは、

自覚を促し、自立を応援だ。



      続く 第497話へ



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