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特別シリーズ 
社交ダンスを教えるということ vol.4 

そしてカップル破局の時

~カップルレッスン修行 ③~



その日、お二人は、
レッスン開始30分くらい前にスタジオに到着。
珍しく組んで練習を始めたが、
その様子はもう

末期的状況だった・・・?

K子さんは眉間にしわを寄せて、
終始うつむき加減のメチャ暗だ。
ホールドをして踊っていても、
お互いの一体感はまるでナシ。
「あなたと踊り続けていくのが、
苦しい、どうしてもできない」

そんなココロの表れか、
ちょっと踊っては、
もうすぐに離れての繰り返し。
そう、踊りが続かないんだ。
二人とも、無言。

もちろん、
一生懸命に気持ちを立て直そうという
努力をしていないわけではないのだろう。
特にY氏はなんとかガンバッテ踊り続けて・・・
と試みている様子がアリアリなのだが、
どうもK子さんの気持ちが
萎えてしまうみたいなんだな。
沈んだ表情で一人椅子に戻り、
Y氏のシャドウを
冷ややかな目で見ているK子さん。
チラと時計に目をやり、
「ソロソロレッスンが始まる」
を確認したY氏は、
フゥッとため息をつき、
椅子に戻ってくると、
汗をタオルでぬぐいながら、
やや思いつめた表情だ。


やだなぁ・・・

今日もしんどい

レッスンになりそうや



「では、始めましょうか」
の声に、
二人は腰を上げるがその顔に笑顔は、ない。


今の私だったら、
いきなりレッスンに入るかどうか・・・・
穏やかに微笑みながら、
「(調子は)ドウですか?」
などと声をかけ、
それぞれのココロの負担を少しでも
軽減させる方向に動くかもしれない。
きっと、お互いがお互いに向けて
言いたいことがいっぱいあるだろうからね。
で、お二人の顔を見ながら、
もめている原因を探るための情報収集に
時間をユッタリと使うだろう。
そうすればこの時点で、どちらかが
「先生、あのぉ
・・・実は・・・」
と切り出しきて、
レッスンの流れが変化する可能性もある。
それでもOKだ。
ただただ、カラダを動かすだけが
ダンスのレッスンやないからね。
そして、ころあいを見て
「ドウですか?
1曲踊ってみられます?」

と、二人の気持ちを確認してから、
ダンスヘ・・・と進行させるだろう。

が、その当時の私に
そんなココロの余裕なんてぜーんぜん。
重い空気を払拭しようと、
いきなりタンゴの音楽をかけ、
ルーティンを通してみましょか、
と促したんだ。
二人は無言のまま、移動。
スタンバイ。

スタート・・・

出だしから、

ケンカのようなタンゴだった。

まぁ、タンゴというダンスの特徴で、
ケンカしているかのような、
キツイアクションをしても
踊ってるように見えちゃう?
ところなんかが余計に危ないんだけれどもね。

ソレは、
中盤のコントラチェック辺りからだった。
K子さんがY氏のホールドのなかで、
ゴソゴソし始めたのだ。
「締めないで!」
彼女の背中は悲鳴を上げているのか・・・
と、次の瞬間、
彼女は、
「もう、いやぁっ!!」
とばかり、Y氏の腕を跳ね除けた。
初めて見る、激しい抵抗だった。
まるで、羽交い絞めから脱出するかのような、
大げさなアクション。
顔は真っ赤。
そして、キッとにらんだソノ瞳は
・・・涙ぐんでる?


「お、おい、ナニするんや!?」
と、目を見開きあわてるY氏。


で、とっさに腹も立ったんだろうね。
ものすごく憎しみの表情を浮かべ・・・
しかし、
コレはいけないと思い直したのか
ひと呼吸置いた後、
かろうじて私のほうを向き、


「すいません・・・」


こんなシーンを見せてしまって、
お恥ずかしいことです。
と、いったところか。
と同時に、
K子さんのあまりの激しいダメだしに
傷ついたのか、
ヒドクしょげ返っているんだ。


あわてたのは、Y氏だけではなかった。
コーチャーである私も、だ。
見てはならないものを見てしまった
そんなショックから、
小さなパニックにも陥っていたのであろう。
「とりあえず、
K子さんの気持ちを収めなきゃ・・・」
と、
空しく鳴っている音楽を止めてから、
二人のところに近寄る。

すぐ近くで見るK子さんは、
ホンマに怒っている!!??。
一体全体、なぜ、


ソレほどまでに

どうして・・・!!??



という思いが、私の頭をよぎる。
するとK子さんの口から
思いがけない言葉が飛び出したんだ。


「この人(Y氏のこと)、
テクニックばっかり、
やろうやろうとして・・・」



Y氏は
「え?」
という解せない表情だ。


K子さんはかまわず、
私のほうに向き直り、
ここぞとばかり訴えてくるんだ。

「私は、この人と、
仲良く踊りたい・・・それでいいんです。
ソレなのに、ヒザを使ってとか、
ホールドをアァやってとかこうやってとか、
そんなことばっかり考えて、踊ってる。
私のことなんて、全く無視。
で、口を開けば、
わたしにも、
もっと自分でホールドを張って、
足を使って動いてとか、
そんなのバッカリ!!
一緒に踊っていても、
ちっとも楽しくないんです」



私はドキッとした。
Y氏がヤロウやろうとしているテクニックって、
みんな、私がレッスン中に教えたものばかり・・・。


「なんで、そんなに
テクニックばかりにこだわるのよ!」

キッとして、Y氏をにらむK子さん。


「それは・・・」
Y氏は言いかけたが、スッと口をつぐんだ。

そして、不思議そうな目つきで
K子さんを見ている。
「この人、ナニ言ってるの?」
という感じなんだ。
「ダンスがうまくなりたくって、
練習してるんやろ?
ただ楽しく踊ってるだけだと、
上手くなりっこないヤンか!?
だから、こうやって、
プロの先生にレッスン受けて・・・」
とか
「ソレは、女性と男性の考え方の違いだよ」
とかって言いたかったんじゃないの!?と思う。
でも、Y氏は何も言わず、
剣を静かに懐に治めたのだ。



「ルンバの時は、
スゴク楽しかったのに・・」

K子さんは恨めしそうに言う。



私は、頭が混乱していた。
残りの時間は、
Y氏が私とK子さんの間に立って、
ナントカしのいだって感じ。

非常に多くの
しかも見えない問題が残ったままの、
後味の悪いレッスンとなってしまったんだ。
次のレッスンまでに、
立て直さなければならない。
私は、憂鬱になりながらも、
このままでは絶対にダメだ
・・・そう強く思った。


が、次の週、
二人は直前になって
レッスンをキャンセルしてきたんだ。
理由は仕事の都合!?
でも、私はイヤァな予感がしていた。
次の週も・・・キャンセル。


そして、
K子さんから電話が入った。
「しばらくYさんとは、
解消して様子を見ることにしました。
それで、レッスンの方も・・・」




私は、言い知れないショックに
打ちのめされていた。



      続く 第491話へ



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