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チョット中休み エッセイvol.10 

父・母のグレイトなデモ

~感動的なデモを体験したい ②~


昨年“目撃”しちゃった感動デモンストレーション
それは、私にとって、
ダンスにおける“父と母”のデモ
つまりは、
かつてのお師匠サンのデモなんだ。


私は大学を出てすぐに、
某スタジオに“入社”している。
そこで約6年間、
プロの競技選手として、
そして教師としての“修行時代”を送っているんだ。
そのときのお師匠サンってことになるんだな。
28歳の時
「エ~イ、辞めてやる!!」
で、さよなら・・・

以来、ダァレの師事も仰ぐことがなかったため、
(ロンドン留学の際のコーチャー陣を除けば)
この“父と母”が、わたしにとって、
生涯唯一の“ダンスの師”というわけだ。
→ちなみに、スタジオ勤務をやめると同時に、
競技選手時代も幕。
でもって、
自分たちの拠点を構えるコトもなく、
車でアチコチ自らが出向いていってのレッスン・・・の

巡業時代の始まりだった。


ダンス年齢で言うなら、
学連の4年間は、赤ちゃん~小学生ぐらいだから
この修行時代はちょうど
“思春期”にあたるのかシラン?
で、わたしはホンマ、とんがっていたし、
コンプレックスにあえいでもいた。
だから、どうしても分からなかったんだ、
“父と母”が、
私たち(このときのリーダーは学連物語のニヒル君)
にかけてくれていた愛情の意味が・・・。

私たちが“入社”した時、
“父と母”は、すでに多くの栄光を手にし、
ちょうど現役最後の時を迎えようとしていた頃だった。
最後のひと華を大いに咲かせた後、
次時代を継ぐモノへの期待の矛先は、
なんと、ググッとコチラに
・・・が私たちを苦しめたんだ。
傍目から観れば“すごく恵まれている”
でも、私たちには重荷過ぎたんだよな。
親子の確執はドンドン深まり
で、突然の別れ・・・。
スタジオのスタッフとしての

最後のお仕事は、

“父と母”の現役引退パーティ


だった。


アレから15年。
よもや二度とナイであろうと
踏んでいた事態が、起こった。
数年前からホンの少しづつ、
縁を取り戻しつつあった“父と母”のいる
“郷里”でのイベントに、
足を向けることになったのだ。
しかも、かつての“わがまま・反発・娘”は、
人生の新しいパートナーを連れて帰ってきた・・・

それは、
ダンスに目覚めつつあるわがダンナ様の
「オレ、一回、
豪華なホテルのパーティって経験してみたい!!」

が、きっかけだったんだ。


でもね、私
現役スタッフ時代から、
ホテル・パーティに対しては、
色んな感情を持っていたんだよな。
賛成か反対か? 
良いか悪いか? 
真・善・美か偽・悪・醜か?
なぁんて突っ込んで聞かれても、
ココでは大きな声で言えないでしょ!?
って感じだったんよ。
ところが不思議なことに、
ヒデ君のおねだりに対して、
フッと“お客さんとして行って見ようかな?”
と気が向いたんだ。
それに、当日のゲストを問い合わせてみたところ、
ヒデ君のDVDの師だと分かり、

「うわぁ~! 
ナマのマリトースキーが観れるの!? 
オレ、絶対、行く」


こうして、15年ぶりの

“里帰りイベント”

参加話は決定的となったわけ。


私としては、
現役スタッフだった頃、しょっちゅう、
世界の凄腕ダンサーを間近で観ていたし、
(コレも“父と母”のオカゲだが)
その辺に関しては冷めてもいたんだが、
あの頃から私はものすごく、変わった・・・ハズ。
今の“眼”に“里帰りイベント”は、
どう映るのだろうかってな好奇心もあったし、
「私たちも、
老体にムチ打って1曲、踊るからね」
 
という、母の声にも惹かれたんだ。


へぇ~、まだデモしはるんや・・・。
と、チョイ驚きましたわね。
なぜって、スタッフだった当時、
コンナ話をよく聞かされたからだ。


「海外の偉大なダンサーはプライドを大事にする。
現役選手の頃のように踊れなくなったら、
人前ではもう踊らない」



ソウ言う“父と母”からも
「自分たちもそのつもりだ」
ってな意志を感じ取っていたんだな。
私は、指を繰りながら計算を始める。
フト“父と母”の歳が気になったんだ。
もう○○歳になってはるのに、
踊る・・・!?

引退パーティでのダンスを最後に、
もちろん私は、
“父と母”のダンスを眼にすることは一度もなかった。
いや、正直に言えば、
“父と母”の一世一代の引退パーティでの
“ラスト・ダンス”さえ、
まったく記憶に無いんだ。
「コレが最後のお勤め。
コレが終われば自由になれる・・・」
という、つめたーい気持ちで、
機械的にお仕事をしていたからに違いない。


さてさて、パーティ当日
娘は“父と母”に、ヒデ君を紹介だ。
今日のこの時のために、
スーツ&ネクタイ・・すべて新品でそろえ、
背筋を伸ばし、お腹を引っ込め・・準備万端、
礼儀正しく誠実に、挨拶をするヒデ君に、

父は開口一番
「オオッ、ごっつええノン、見つけたナァ」

母も
「背、高いし、カッコええやん」
と、満面の笑み。

「娘は、幸せだ」
ソウ、肌で感じ取ってくれたよう。
とっさに、カップルバランスを診断ってところは、
サスガって感じだけどね。

「なつかしいヤロ?
ココで、踊ってたんやで」

という、母の声に、
うなずく私。
素直になれる喜びを、
今、私、味わっている。
ソウ、確かにホテルのパーティは
“イヤなもの”ではなくなっていた。


父と母のひとつの表現だ・・・


そう、理解できる自分がいたんだ。
そして、
「このホテル・パーティの裏舞台では、
今もいろんなことがあるんだろうな、
でも、ソンナコンナも含めて、
全部、コレで良いんだ・・・」
ってな不思議な気持ちになってきたんだ。
15年の歳月は、思った以上に
私に大きな変化を与えてくれていたんだな。


そして、お待たせ!!
クライマックスのデモンストレーション

「泣いてしもうたわ。
ホンマ、来て、良かった・・・」



ヒデ君、感動体験は、
なんと、意外にも、
あれほど楽しみにしていた、
マリトースキーのデモではなかったんだ!!??


「オレ、ビックリしたで。
“あのデモ”に比べたら、
マリトースキーのデモは、
“お仕事”のように見えたんや」


「そら、上手いで。
比べモンになれへんくらい、
テクニックは、すごい素晴らしいいんやけど、
感動せえへんかったんや」



「あまりにも(踊りが)違いすぎて、
異星人がダダッと踊ったって感じ。
感情移入がでけへんままに、
“あれっ?もう、終わり?”って感じやった」



ウーン、ヒデ君、すごいご指摘!!


「テクニック観るんやったら、
DVDの方が、
何回も巻き戻しできるから親切や」

って、苦笑しているよ。



分かるワカル・・・


ヒデ君、
実はね、私も一緒だったんよ。


で、
ヒデ君、感涙の“あのデモ”というのが、ソウ
“父と母”の

ルンバ・デモだったんだ。


本番前、控え室の袖で一生懸命ルンバウォークや、
クカラチャをしてアップする
“父と母”の姿が目に入る。
と、私の中で、封印していた、
あの頃の痛みがよみがえりそうになってきたんだ。
ドキドキ・・・胸が騒ぎ始める。
そんな中、会場は暗転になり、
そして、スポットライトに浮かび上がる、

“父と母”の勇姿!?

ソレは、現役の頃とちっとも変わらない、
素晴らしいダンス・・・だった。
いや、違う、
現役の頃の、非の打ち所のない
機械的なまでにキレイなダンスではなく、
ソコには、
もっと人間的な感情のやり取りが見えたんだ、
だから、だから、
アンナにも感激・感動したんだ!!

具体的に言っちゃえば、
体力etc.の衰えをきっと気力でカバーしているんだろう、
ってなシーンがいくつもあったってこと。
例えば、母が遠くに伸び上がってラインして、
つないだ手を手繰って、
父の懐に帰る・・・そういうフィガーになると、
「あなた、行くわよ!」
「よし、大丈夫、ドーンと来い!」ってな、
ココロのやり取りのような一瞬が“見える”んだ。
単なるテクニック的コネクションが昇華され、
感情からのコネクションになってる・・・
私は、その二人のある意味必死な表情に、
魅入られた。
“父と母”はホントに協力して、
ダンス、してるんだな、ソウ思った。
しかも、表面的には、
全く衰えが見えないから、
ホンマ、もう、アッパレだ。


私は、いつしか、
頬を流れる涙を止めることができなくなっていた。


それでも、
この眼にシッカと焼き付けておきたい、
“父と母”の一挙手一投足を。
化粧が落ちるのも忘れ、涙をぬぐいながら
子供のように、目を見開き、泣いた。

そして、
手が痛くなるほど、拍手をした。


ふと、気がつくと、
そんな私の様子を見て、ヒデ君も泣いていた。



デモ終了後、
「良かったです、感動・・・しました」
という娘の言葉に、


照れ笑いしながら
「一箇所、
まちごうて(間違ってしまった)しもうた」

と父。

現役時代の完ぺき主義の父からは
聞いたことがなかった、言葉だった。


フト、思い出して私は尋ねる。
「すごく音楽も良かったですね。
どこかで聞いたことある・・・」



「ナンヤ、お前さん、
覚えてへんのか!?」




「え?」



「あの音楽は“現役引退パーティ”の時、
使った曲や。
アン時と同じルンバやったんやで」




なんでも、ひょっとしたら、
「このデモを最後に
もう、パーティで踊らないかも」
ということで今回、
“現役引退パーティ・ラスト・ダンス”の
再現デモをしたそうな。

す・ご・い・・・



帰り道
ヒデ君は言った。

「な、パーティに行ってよかったヤロ?」


そして、
一人うなずきながらこんなことも

「感動するデモには“愛”があるな・・・」




場面変わって、

「今度は、
ヒデ君が感動したデモの話を教えてよ」



「ウーン、ヤッパ、あの人たちかな」



そう、私の生徒さんなんだけど、
実は、
みんなに感動を与えるデモンストレーターが、
いるんですよ!!


それが、ビックリ・・・・・・・・・!?



      続く 第418話へ



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