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一週間経って、またジュンコ先生のレッスン日がやってきた。

今日こそはコレを質問したい・・・
ソウ心に決めてやってきたのは、38歳、坂田さん。ダンス歴6年。
実は彼、チョット気が弱い。
「みんな活発に発言したり、質問できたりするけど、僕はまだ無理だなぁ。
何を質問していいのかさえ、わからないんだもの」
なんて言っていた彼に、
ようやく“どうしても質問したいこと”があらわれたのだ。


「こんなこと聞いたら笑われるんじゃないか?
って思うようなことが、実はものすごく大切だってことがよくあるの。
ほかのみんなのためにも、勇気を出して質問してみてね」



ソウ、ジュンコ先生は言っていたなぁ・・・よーし


「先生、あの・・
すごく当たり前の部分かもしれないんですけど、
僕、どうしてもできないところがあるんです」




「あら、坂田さん質問ね、うれしいわ。どこかしら?」



坂田さん、汗をかきながら真剣な表情だ。


「ホールドの作り方のプリント (第68話)
男性の右腕(手首とヒジの間)と、
女性の左腕(ヒジとワキの間)が接触
がどうしてもできません」



「できない・・・どうなるのかな?」



「あの、普通にホールドしただけだと接触しないんです。
っていうより、そこの接触を意識したことが今までなくて、
今回初めて知ったので、
それからは意識してくっつけようとしているのですが、
そうしたら右腕が持ち上がってきて、肩が出て、エライ格好になるんです。
どこが悪いのかなぁと思いまして。
初心者の女性で、腕をダラーンとしている人とは、
普通に接触できるのですが・・・」



坂田さん、一生懸命だ。


じっと聞いていた、ジュンコ先生
「坂田さん!良い質問だわ。
この⑥のコンタクト(接触)は見過ごされやすいんだけど、
多くの問題を含んでいる、大切なんだけど難しいコンタクトなの。
そうよね、みんな」


ソウソウと、特にベテランの面々がうなずいてる。


坂田さんはうれしくなってきた。
みんなの仲間入りできたようなそんな感触さえ味わって。

そんな坂田さんの様子を、
最年少カナちゃんが微笑んで見つめている・・・。



「まず、はっきり言っておくわね。
この⑥のコンタクトは、


“せねばならない”ものではない!


結果コンタクトできればもちろんOK。
でも、ナシなときはそれでもOK。
なぜって、無理やりひっつけなきゃと思えば、
今、坂田さんが言ってくれたように、
右腕を持ち上げることになる、右肩が出る、
ホールドをセット(固める)しやすい・・
女性側の問題では、男性のホールドを抑えてしまう、
男性のホールドが下がってきたら接触が離れるため、気になって踊れない・・
ネ、大変でしょ?」


「先生、それに・・・」
平田さんが口を開いた。

「小柄な男性と大柄な女性だと、テンで無理なことがありますわ。
一生懸命、右腕を上げても、女性の腕のほうが上についてますからな・・・」


小柄な平田さんが実感をこめて言ったため、みんな苦笑している。


「そうね。背の違いの影響も受けるから余計に難しいわね。
でも、いい?ここのコンタクトにはそれでも大切なの、
でもくっつけること自体が大切なんじゃぁなくて・・・」


ジュンコ先生は、一呼吸置いてこう言った。
「実は、

ダンスの上達振りがよくわかるの、

ここのコントクト加減で」


へぇ~。 
坂田さんはちょっと驚いた表情だ。


「⑥のコンタクトは、男性女性それぞれにテクニックが優れてくると、
まったく無理せずできるようになってくる“結果”なのよ。 (第73話)
では、どういうテクニックができるようになると、
結果、心地良くくっつけるようになるのか・・・チョット試してみましょう。


ここのコンタクトだけで、
ワルツのステップを踊ってみましょうか。
さぁ、誰かと組んでね」



ザワザワ・・・みんな四苦八苦している様子だ。



「どう?うまくいくかしら?」



「先生、コンタクトが離れるんじゃないかって、
気になって踊れませーん」

誰かが叫んだ。



「なかなか自由に踊れないようね。
では、一度離れて。
・・・で、先週やった“床からエネルギー” を思い出して、
まず、
相手と組む前に、自分が床と組んでいるかを確かめて (第69話)
そして“二律背反” (第71話)を思い出して、
自分のカラダと手、腕(男性は右手、女性は左手)
がつながっているかを感じてみましょう」


「あ~習ったことすっかり忘れていました。
こういうときに大切だったのですね」

と、トシ子さん。


「そうね。それでは思い出したところで、
もう一度片手コンタクトで踊ってみましょう」



「先生!
相手との接触に一所懸命になるよりも、
自分と床の接触、自分のカラダのつながりをしっかりすれば、
ちゃんと

相手との接触部は心地よくキープできる

ものなのですね。


僕、それに、右ひじの角度を決めちゃっていたから、
それもできない原因の一つだったんですね。
かなり右腕、力んでいましたから・・・」
うれしそうに、坂田さんが声をあげた。
額には汗が光っている。


パートナーを務める、カナちゃんも
「坂田さん、リード良くわかるようになりました!」
と満足げだ。


「わかったかしら?
女性の左脇の下のコンタクト、
たった一点を頼りに相手と感じあって踊る

ってスゴく難しいことなのよね」


先生はみんなを見まわしながらそう言った。


「ただ単に、外側の肉が触れ合っているだけではダメね。
余計に、離れることが気になって自由に踊れなかったでしょ?」


みんなうなずいている。


「でも、それぞれが、
床のエネルギー汲み上げ、
それを手・腕に流れるというイメージを持てば、
ずいぶん自由に踊れるようになって、
しかもコンタクトは外れにくくなった
わね。
ということは、本当は、男性なら右腕、女性なら左腕の中に、
ダンスのエネルギーが流れているもの同士しか、
女性の左脇の下のコンタクトは無理。
・・・だから、『結果コンタクトできればOK。
でも、ナシなときはそれでもOK』と言ったのよ」


ジュンコ先生、しっかりした口調でこう言った。

「最後にここのコンタクトにおける注意
男性へ、女性の脇の下に触れるわけなんだから、
紳士的な気持ちで丁寧にね・・・

女性は、男性のホールドの上に乗せる側だから、
自分勝手にピンと張るのも、かといってグッと押さえるのも、
男性にとってすごくストレスになるということを理解
してあげながら、
自分の勉強に励むこと・・・以上よ」


「よくわかった。やっぱり質問してよかった」
と坂田さんはニッコリ。

「あのイメ―ジトレーニングは正解だったんだ」 (第70話)
この日のレッスンを受けて、和夫も心の中でガッツポーズをしていた。

真理も
「ホント、カズの言うとおりだったわね」



      続く 第79話へ



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