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「トップライン(頭を含むカラダの上体で作るライン)は、
男性と女性が作るシェイプの仕上げね。
その、花が開いたような美しさに憧れる人は多いと思うわ」

ジュンコ先生はそう言ってから、強い口調でこう言った。


「重要なのは、

頭や顔の位置は、

できるだけ決めちゃダメ
ってこと。


『ココに置こう』と決めた時点で、
ダンスの進化・成長が止まっちゃう可能性があるの。
なぜなら、踊っているときの頭の位置は、
体幹部の運動に合わせて刻々と変化するものだから」


「先生、それじゃぁ・・・」
テクニシャン紀子さんが手を上げた。

「あのぉ・・・女性がホールドをするとき、左手首の上を見るとか、
男性の右ホールドの上の“枠(わく)”を見るという風に、
視線も決めなくていいわけですか?」


「もちろん。
視線を決めることで“目”に力が入ったら、
途端にバランス感覚が悪くなっちゃう
わよ。
この辺の話はとても重要だから、また機会を作って特別に話すわね。
でもこれだけは覚えておいて」

ジュンコ先生、ちょっと間を置いてから

「頭は首の上に乗っかってはいるものの、
床から最も遠いところにあり、
おまけに頭のテッペンはどこともつながっていない・・・
だからものすごく不安定なものなの。
ただし、そうやってフラフラ・グラグラすることで、
地球の鉛直方向を探りながら、
カラダ全体のバランスを取ろうとしている
わけだから、
むやみやたらに位置を決めてしまってはダメよ。
視線も同様。
バランスの悪い人は、往々にして目がリキんでいる人が多いのよ。
頭・首、目もすべて、まずはリラックスが大切ね」


みんな真剣な顔で聞いている。


「頭や顔の位置は、骨盤との連動で最終的に決まるものなの。
だから、カラダ全体の動きが正しくなってくると
“本来あるべき場所”に自然と落ち着いてくるわ。

そうなった時に、

あの美しいトップラインが誕生!

・・・なんだから、うれしいでしょ!? 

つまり、あのキレイなラインは特殊なものではなく、
機能的にカラダが使われた際にできる結果なのよ。
だからアレを本気で目指したい人は、
早くからカタチを決めずに、
カラダ全体の身体能力を上げていく
こと!
“急がば回れ”よ」


みんな「フーン、そんなものなのか」といった面持ちだ。


「じゃぁ、ちょっと実験ね。
体幹部の動きから、
トップラインが決まっていく感覚
を体験してみましょうか」


「ホールドを作る要領で、肩幅くらいに足を開いて、
男性は左足、女性は右足に乗って、
床からのパワーを感じる、
で、お腹に少しでもグッとした感覚がくればOK。

次に、
両手で前にある大木を抱えるような感じで、円を作るの。
みぞおちの前くらいに丸い空間ができたらOKよ。
顔は楽にまっすぐのままでね」


みんな自分のカラダの前に丸い空間を作り始めた。


「それができたら、
右手で左手首をつかんで右ナナメ前にゆっくり引っ張っていく。
頭と腰の位置はそのままで、
この丸い空間を自分の右ナナメ前に移動させるのよ。
カラダの中からキューっとねじる感じ。
うまくいったら、顔の下に左アーム(腕)と左胸が来ている

・・・どうかしら?」


「先生、お腹のあたりがかなりしまってくるんですけど。
右にねじろうとした分だけ、左に押し戻されるような感じで・・・」

ケイコさんだ。
ボリュームのあるカラダなのでお腹辺りがちょっぴりキツそうだ。


「それで正解!良い運動ができている証拠よ。
実はこれも“ニ律背反感覚(第71話)なの。
腕を右に引っ張るほどに、左側からカラダが締まってくる。
そうしたら、
お腹がギュッとしまってしっかり立てている感覚がするでしょ?
それでOKよ」

ジュンコ先生、みんなを見まわしながら
「実はね、この円の中に相手がいるのよ。
つまり、いつも自分の“右前”に相手がいるってことね」

ジュンコ先生自らも男性のホールド感覚で左足に立ち、
円を作って見せた。

「こうすると、カラダの軸はまっすぐなのに、
顔は左を向いているって感じがあるでしょう?
それに、もう一点、観察してほしい感覚なんだけど、
オヘソの位置も、実はほとんどまっすぐなのに、
そこから出ている
エネルギーはそれぞれ右ナナメ前にいる相手の方に向いている
感じがしない?」


「ハイ、します。
ヘソからエネルギーが発射されているようですわ」


ベテラン平田さんがおどけて答えたので、みんなから笑いが起こった。


「いいわよ。
では次ね、円をもっと大きくしていくの。
つまり右ナナメ前にユッタリと力を抜いて両手を差し出していく感じよ。
そして、
その反動で、頭が左後方、
背中の向こうに円からはみ出してゆく感覚
を感じてみて」



「先生、

手が前に行けばいくほど、

お腹が後ろに引けてきて、

頭が後ろにゆったりと倒れていく


・・・そんな感じですか?」



「ケイコさん、ソウよ。ずいぶんカラダがつながってきたわね。
いい、これはね、
カラダのインナーマッスル・ネットワーク・フォー・ホールド(第67話)
を形成し始めるとできる身体反応なの。
相手に床からのエネルギーを与えれば与えるほどに、
その反動でトップラインが広がっていくってわけね」



まぁ、扇のようですわ

うれしそうに声を上げたのは、紀子さんだ。

「扇は広がれば広がるほどに要(かなめ)の部分は締まっていきますから。
今、ホールドが大きくなればなるほどに、カラダがキュッとなってきて、
相手とも頭の辺りが離れれば離れるほどに、
おへその辺りは、
密に仲良くなるじゃないかってイメージしたものですから・・・」


「それはいい発想ね」
とジュンコ先生。


平田さんも
「イヤァ、
うちの奥さんに『頭がうっとうしいから離れろ』と言ったら、
ソックリかえられてかえってエライ目に合ってたんですけど、
ちょっと解決の糸口が見つかりましたわ」
と、うれしそうだ。


「良かったわ(笑)手首を離してやってみると、
もっと両腕の自由度が増してワイドなトップライン感覚を楽しめるわよ。
両手を肩甲骨から右前へ差し伸べた分、頭は後ろ
その際、
ひじの形や角度を決めないで柔らかく、がポイントよ。
以上の感覚を実際に二人で組んでやってみる、これは各自練習してみてね」


そして、最後に先生はこういった。
「今日のこのレッスン中に質問に答えた内容(第69話)(第71話)(第73話)は、
みんな中身の濃いものばかりだから、あせらず、忍耐強い練習が必要。
質問は随時受け付けるわ」



      続く 第77話へ



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