2007.04.02 (第69話) 最上級のホールド・いざ実践!Ⅱ 床からもらうパワー・エネルギー
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「ハイ!」
真っ先に手を上げたのは、和夫。
余りの勢いの良さに周りはちょっと引き気味だ。
レッスンのしょっぱなにジュンコ先生が、
「前回渡したホールドの作り方のプリント(第68話)の内容について、
何か質問あるかしら?」
と聞いた途端の反応だった。
「パートナーを持って、ヤル気出てきたなぁ」
入会した頃の、
どこにいるかわからないほどに物静かで、
隠れるように踊っていた照れ屋の和夫を覚えている人たちは、
最近の彼の変貌ぶりに驚いている様子だ。
和「練習をしてみたのですが、
②の『床からの反作用を受け、お腹にパワーが上がってくる』
という部分の感覚が、よくわかりません。
ここの感じがつかめないと、それから先に進めない気がしたのですが・・」
先「和夫さん、良く練習したようね。
いいところに気がついたわ。
そうなの、実はこの②がホールドの作り方は、
全行程の中の隠れキーマン的な存在にあたるのよ。
どういうことかを説明するわね」
和夫は褒められて、ちょっと照れ笑い。
他の者は次の先生の言葉を興味深く待っている。
先「人間のカラダは、
当然重力によって、床の方向に引っ張られているわよね。
これは言い変えると床を押す力でもあるわけ。
それが作用よ」
ジュンコ先生は白板に下向きの矢印↓を書き、
その横に“作用”と書き添えた。
先「これに対して反作用は、床が下から押し返す力。
床が下から人間の重さを支える力ともいえるの」
矢印↓と同じ長さの上向きの矢印↑を書いた。
先「地球上から重力がなくならない限り、
私たちは自分の重みでもって床に“作用”をしちゃっているの。
で、床から“反作用”をもらってきて、立ったり歩いたり、
日常の動きをしているわけなのね。
もちろん、これはダンスを踊る時も一緒・・・」
真理は、コノ手の物理やら数学やらって話が大の苦手。
「うーん難しいな。後でもう一度、カズに教えてもらおう」
先「いい?ホールドに限らず、ダンスのすべてのテクニックは、
自分の重みによる“作用”とそこから生まれる“反作用”
・・・これが大前提!
だから、日頃は無意識なその感覚を、
実感として捉えなおす作業が必要なわけね」
それからジュンコ先生は、
みんなを壁の前に立つように指示した。
先「左右どちらでもいいから、片方の手のひらを壁に当てます。
ひじは力を入れずに伸ばしてね。
では、そのままのかっこうで手で壁を押してみて。
手の力だけで、押すのよ」
みんなそれぞれ壁に向かって、押し始めた。
先「次は、手がカラダとつながっているのを意識して、
カラダの中から、押してみて。
どんな感じがするかしら・・・和夫さん」
和「ハイ、お腹の中にグーッと力がきました」
先「そうね。じゃあ、もっと強く押してみて。どう?」
和「もっと、ギュ―ッって力がきました」
先「これが『作用と反作用』の“実感”なの。
今は、手のひらが足の裏。
壁が床代わりになっているのよ」
ホゥーと、みんなの納得した空気が漂った。
真理もこれは理解できたようだ。
先「壁を、つまり床を押せば押すほど、押し返してもくれたわね。
それに比例してお腹の中もシッカリギュ―ってしまってきたと思うのよ。
これが、ダンスのパワー・エネルギーの正体なの。
自分の重みを利用して床からパワーを頂く、
そしてそれを、
ホールドなり、動きなりのエネルギーに転換して使っていくわけ・・・
言っていることわかるかな?」
「アー、先生、
つまりそれは、
『地球のパワー・エネルギーを足の裏からもらい続けながら、
それを動力として、いろんなダンスの表現をする』チュウことですよね!?」
大きな声で発言したのは、ダンス歴40年のベテラン、平田さんだ。
フイに拍手が湧き起った。
みんなの中に、
「ア、それそれわかる!」みたいなピタッとくるものがあったんだろう。
実年齢68歳、平田さんが青年のように顔を赤らめている。
先「そうよ!よくできました。
で、たくさんのエネルギーを地球から欲しい人は、
たくさん床を押せばイイってことなのね。
つまりいっぱい踊りたい人は、いっぱい床からパワー・エネルギーをもらってね・・・
でも、ここで一点。
この実験から作用と反作用の関係を上手に利用するために、
気をつけなきゃいけない点があるって気付いた人いるかしら?」
ザワザワ・・・
「あの、壁を手の力だけで押したときは、
お腹にパワーが来なかったんですけど、それのこと・・・かな?」
と、ダンス歴10年のケイコ(40歳)さん。
先「そのとおり!今日はみんな調子いいわね(笑)
全員もう一度、壁に手を当てて比べてみましょうか。
手だけで押すと・・・手に力がきて来て、お腹には来ない。
つぎに、カラダの中から押すと、お腹にパワーが来る。
手は触ってみると・・・それなりに力が入っているけれど、
力んだ感覚はない・・・そうね?」
みんな各自試しながら、うなずいている。
先「ってことは、手、つまり足に力を入れたら、
ダメってことなの。
足はただ単に、
床からの反作用をカラダの中に伝える
“導線”に過ぎない
さっきの、平田さんの言葉を借りると、
『地球のエネルギーをもらい続ける』には、
そのエネルギーの通り道に、
リキミや引っかかりがあってはダメってことなのよ」
先「じゃぁね最後に、
壁を押さないうちから手に力を入れてみて。
それで壁を押したら?
ね、大変でしょ?
これは作用と反作用の正しい“実感”が得られない。
だから、足に力を入れること・・・これもNGね」
みんな真剣な表情で聞いている。
先「和夫さん、これで納得できたかしら?」
和「ハイ、よくわかりました」
実はこのとき和夫サン、先生の話を膨らませて、
もっとすごい“発見”を自分なりに導き出していたんだ。
和「・・・今回の足の話はそのまま、
ホールドのときの“手・腕”の話にも使えるはずだ。
よ~し明日の真理ちゃんとの練習で試してみるぞ!」
続く 第70話へ
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「ハイ!」
真っ先に手を上げたのは、和夫。
余りの勢いの良さに周りはちょっと引き気味だ。
レッスンのしょっぱなにジュンコ先生が、
「前回渡したホールドの作り方のプリント(第68話)の内容について、
何か質問あるかしら?」
と聞いた途端の反応だった。
「パートナーを持って、ヤル気出てきたなぁ」
入会した頃の、
どこにいるかわからないほどに物静かで、
隠れるように踊っていた照れ屋の和夫を覚えている人たちは、
最近の彼の変貌ぶりに驚いている様子だ。
和「練習をしてみたのですが、
②の『床からの反作用を受け、お腹にパワーが上がってくる』
という部分の感覚が、よくわかりません。
ここの感じがつかめないと、それから先に進めない気がしたのですが・・」
先「和夫さん、良く練習したようね。
いいところに気がついたわ。
そうなの、実はこの②がホールドの作り方は、
全行程の中の隠れキーマン的な存在にあたるのよ。
どういうことかを説明するわね」
和夫は褒められて、ちょっと照れ笑い。
他の者は次の先生の言葉を興味深く待っている。
先「人間のカラダは、
当然重力によって、床の方向に引っ張られているわよね。
これは言い変えると床を押す力でもあるわけ。
それが作用よ」
ジュンコ先生は白板に下向きの矢印↓を書き、
その横に“作用”と書き添えた。
先「これに対して反作用は、床が下から押し返す力。
床が下から人間の重さを支える力ともいえるの」
矢印↓と同じ長さの上向きの矢印↑を書いた。
先「地球上から重力がなくならない限り、
私たちは自分の重みでもって床に“作用”をしちゃっているの。
で、床から“反作用”をもらってきて、立ったり歩いたり、
日常の動きをしているわけなのね。
もちろん、これはダンスを踊る時も一緒・・・」
真理は、コノ手の物理やら数学やらって話が大の苦手。
「うーん難しいな。後でもう一度、カズに教えてもらおう」
先「いい?ホールドに限らず、ダンスのすべてのテクニックは、
自分の重みによる“作用”とそこから生まれる“反作用”
・・・これが大前提!
だから、日頃は無意識なその感覚を、
実感として捉えなおす作業が必要なわけね」
それからジュンコ先生は、
みんなを壁の前に立つように指示した。
先「左右どちらでもいいから、片方の手のひらを壁に当てます。
ひじは力を入れずに伸ばしてね。
では、そのままのかっこうで手で壁を押してみて。
手の力だけで、押すのよ」
みんなそれぞれ壁に向かって、押し始めた。
先「次は、手がカラダとつながっているのを意識して、
カラダの中から、押してみて。
どんな感じがするかしら・・・和夫さん」
和「ハイ、お腹の中にグーッと力がきました」
先「そうね。じゃあ、もっと強く押してみて。どう?」
和「もっと、ギュ―ッって力がきました」
先「これが『作用と反作用』の“実感”なの。
今は、手のひらが足の裏。
壁が床代わりになっているのよ」
ホゥーと、みんなの納得した空気が漂った。
真理もこれは理解できたようだ。
先「壁を、つまり床を押せば押すほど、押し返してもくれたわね。
それに比例してお腹の中もシッカリギュ―ってしまってきたと思うのよ。
これが、ダンスのパワー・エネルギーの正体なの。
自分の重みを利用して床からパワーを頂く、
そしてそれを、
ホールドなり、動きなりのエネルギーに転換して使っていくわけ・・・
言っていることわかるかな?」
「アー、先生、
つまりそれは、
『地球のパワー・エネルギーを足の裏からもらい続けながら、
それを動力として、いろんなダンスの表現をする』チュウことですよね!?」
大きな声で発言したのは、ダンス歴40年のベテラン、平田さんだ。
フイに拍手が湧き起った。
みんなの中に、
「ア、それそれわかる!」みたいなピタッとくるものがあったんだろう。
実年齢68歳、平田さんが青年のように顔を赤らめている。
先「そうよ!よくできました。
で、たくさんのエネルギーを地球から欲しい人は、
たくさん床を押せばイイってことなのね。
つまりいっぱい踊りたい人は、いっぱい床からパワー・エネルギーをもらってね・・・
でも、ここで一点。
この実験から作用と反作用の関係を上手に利用するために、
気をつけなきゃいけない点があるって気付いた人いるかしら?」
ザワザワ・・・
「あの、壁を手の力だけで押したときは、
お腹にパワーが来なかったんですけど、それのこと・・・かな?」
と、ダンス歴10年のケイコ(40歳)さん。
先「そのとおり!今日はみんな調子いいわね(笑)
全員もう一度、壁に手を当てて比べてみましょうか。
手だけで押すと・・・手に力がきて来て、お腹には来ない。
つぎに、カラダの中から押すと、お腹にパワーが来る。
手は触ってみると・・・それなりに力が入っているけれど、
力んだ感覚はない・・・そうね?」
みんな各自試しながら、うなずいている。
先「ってことは、手、つまり足に力を入れたら、
ダメってことなの。
足はただ単に、
床からの反作用をカラダの中に伝える
“導線”に過ぎない
さっきの、平田さんの言葉を借りると、
『地球のエネルギーをもらい続ける』には、
そのエネルギーの通り道に、
リキミや引っかかりがあってはダメってことなのよ」
先「じゃぁね最後に、
壁を押さないうちから手に力を入れてみて。
それで壁を押したら?
ね、大変でしょ?
これは作用と反作用の正しい“実感”が得られない。
だから、足に力を入れること・・・これもNGね」
みんな真剣な表情で聞いている。
先「和夫さん、これで納得できたかしら?」
和「ハイ、よくわかりました」
実はこのとき和夫サン、先生の話を膨らませて、
もっとすごい“発見”を自分なりに導き出していたんだ。
和「・・・今回の足の話はそのまま、
ホールドのときの“手・腕”の話にも使えるはずだ。
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