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「ダンスは音楽の中にあるメッセージ性を表現するもんでしょ。
もし、その音楽の作曲者や演奏者が見たら、
涙を流して喜んでくれるようなダンスがしたいねん」

・・・ニヒル君の言葉を、ジュンコは思い出していた。


良いこと、言うよなぁ~


特に、
「踊っている時、どんなふうに音楽を聴こうとしているか?」
って問いに対する彼の返答。


音楽に敬意を表しながら、感動して聴く


最近のニヒル君語録の中でも、一押しのヒットになるんじゃない!?
「お、ソレって素晴らしいことなんだろうな」って素直に思えるし、
そんな風に音楽を聴くことができたら、
上手に踊れるんやないやろか、ニヒル君みたいに…
なんて興味もそそられたし。
何より、
「ニヒル君とシックリ組んで踊りたいのならば、
お互いを感じるのではなく、音楽を感じろ」
(第42話)
ってこともあって、
私も次に踊るときは、絶対マネしてみようと思ったもんな。


で、次の日、
西部日本戦の前日。

さぁ、いよいよ
リベンジをかけての最後の練習だ。


「やりますか」


「ハイ!!」


エライ気合いの入った返事をしてしまい、自分でもちょっとビックリ。
あの事件以来(第40話)気持ちを切り替えてから、
ニヒル君との練習も楽しくなってきていたし、
何より今日は、試してみるもんねぇ、ニヒル流音楽の聴き方

・・・ルンバから始まった。
実はボックスのルンバのカセットテープの中で、
ジュンコの“お気に入り”の音楽があるんだな。
ソレは、確かA面の最後の曲。
哀愁漂う、もの悲しくも、いいムードのその曲は、
なぜか心の琴線に触れてきて、胸がキュン。
いつも、すっごく気分が乗って踊れたんだ。
あの曲なら、無理なく「敬意を表しながら、感動して聴く」ことができそう。
私はカセットを送ってその曲を頭出し、ほんでもってリピートにセットした。


♪♪♪♪~


「ひまわりか・・・」
ニヒル君がボソッとつぶやいたのを聞き洩らさなかった。


「ヒマワリ?」


「ひまわり・・・やろ、この曲」


「え?そんな曲名?」


「映画の題名がね」


「へぇ~、映画音楽なん?」


「そうや。結構有名やと思うけど、知らん? 実家にビデオがあるわ」 


「へぇ~っ、そうなんや!?」
私はガゼン興味をそそそられた。


「おふくろが好きな映画やったから、
家族は付き合いで何回か一緒に見さされたわ。
ソウいえば、いつも同じ場面で、おふくろが泣きだしとったなぁ・・・」

ニヒル君、楽しそうに話している。


なんでも、
ソフィア・ローレンっていう大女優が主役のイタリアの映画で、
戦争で引き裂かれる男女の愛・・・みたいなストーリー。
夫がロシア戦線へと送り込まれてしまい、行方知れずに。
「私との愛を忘れるはずがない。だから彼はきっと生きている」
必死な思いで、彼を探しにロシアまで行った彼女は、
そこでほかの女性と幸せそうに暮らしている彼の姿を目撃してしまい・・・
とかいう話らしい。

メインテーマであるこの曲は、
映画音楽の巨匠と呼ばれた「ヘンリー・マンシーニ」という人のもので、
ひまわりいっぱいのオープニングシーンから、この音楽が流れ、
要所要所のシーンに、♪♪♪♪って、ちりばめられているんだとか。
ニヒル君いわく、
「僕は、映画そのものより、この曲のほうが印象的やったけど・・・」
で、
「ルンバの音楽で、初めて聴いた時は、びっくりしたよ。
あぁ、あの曲や!ってね」



「知ってる音楽で踊るってどうやった?」


「気分、違うよね、やっぱり。
何を言っているのかサッパリな音楽よりも、ソラ、楽しいよ。
特に映画音楽って、シーンと一体になっているから、
そのときのイメージがわいてくるし、
感情が入りやすいし、いいんちゃう?」



ふ~~ン♪


ニヒル君、
この曲をそんな風に聴いていたんやって知ったことも愉快だった。
ちなみに、ニヒル君はどんなシーンが一番印象的で?


「一面のひまわり畑かなぁ、この音楽を聴いて一番思い出すのは。
きれいに元気に咲き誇ってる、
でも、その下には戦争で失った多くの命が眠っていて、
引き裂かれた、たくさんのかけがえのない愛がある・・・」



聞いているだけでジーンときた。


「ねぇ、踊ってみよう・・・」
すごくナチュラルな気持ちがわいてきて、
その「ひまわり」をもう一回頭出し。


♪♪♪♪~


ニヒル君と二人、
それぞれにイメージしながら、自分なりの表現を試みていたんだと思う。
同じ場面で、お母さんは泣いたという・・・
きっと愛する人の“真実”を知ったとき・・・かな?

サビの部分でいつもより、余計に胸がキュンとなって
踊っていて感・動したよ!
いつも以上に、すごくいい曲や~って思えたし、
そうそう、
こんなエエ曲この世に送り出してくれた、

ヘンリーさんに感謝!!

って感じかな。



フト気がつくと、
いつの間にか、ボックスにやってきた執行部の先輩が、
私たちの練習を眺めていたようで。
踊り終わっときこんな風に声をかけてくれたんだ。

「お前ら、すごく調子エエちゃうん?
それに・・・ジュンコチャン、うまなったなぁ!
びっくりして、見とれてしもたわ」


先輩、マジ顔で褒めてくれている。


「エーエー、ホンマですかぁ!?」



うれしー!



でも、何でそこまで良く見えたんだろう?



「それにはちゃんとした理由があるのよ」
と、ジュンコ先生。


「ジュンコさんはその時、

ある最強のテクニックを知らず知らず使っていたのね。

それで先輩がそんなにビックリしたのよ」


「最強のテクニック!?ですか。
でも、気が付いていないってことはマグレですよね」


「その時はね。
でも意識して使えるようになれば、
素晴らしい、それこそ最強のテクニックになるわ。知りたい?」


「そりゃぁ、知りたいですよ!なんですかそれって?」
                            

      続く 第45話へ


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