2007.02.26 (第34話) テクニックを与え過ぎるな!!・・・ルンバの初歩
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今回のリーパー発表、ニヒル君にとっては、
たぶん私が想像していた以上に嬉しいものだったんだろう。
発表終了後すぐに、
珍しく自分のほうから、一直線に私のところへやってきて、
「今日、何時空いてる? 練習しようや」
その顔は今まで見たことがないくらいに、
明るくて、無邪気で。
あ、彼、苦しんでいたんだ・・・。
一瞬でいろんなことが、わかったような気がした。
私は思わず胸がキュッと詰まった。
ごめん、ちょっと自分だけいい気になっていたよ・・・。
「ホンなら、今日5時に」
フットワーク軽くボックスから出ていく彼の背中を見送りながら、
「がんばって絶対優勝しよう」と、
私は心の中で声をかけていた。
5時ちょうどにボックスへ行くと、何とニヒル君一人。
しかも、結構なボリュームで音楽をかけ、シャドウの真っ最中だ。
エ、いつからやってたん?
シトッと汗ばんだ額。
気分を乗せ、ダイナミックにルンバを踊っている。
オープン・ヒップ・ツイスト
アレマーナ
ハンド・トウ・ハンド・・
そういえば、彼のダンスをこうやってマジマジと見るのは、しばらくぶりだ。
マーカス君と組んでいる頃、練習時間がうまい具合にズレることが多くて、
ボックスで顔を合わすことは、ほとんどなかったんだ。
やっぱ、うまいなぁ…
また、一段とダンスが大きくなっている。
流れるようなアームアクション、途切れることのないボデイの動き・・
音楽ともすごくマッチしていて、思わず目を奪われてしまう。
私が入ってきて、こうやって見ていても、
全く気にもせず、何かに憑かれたように踊りつづける彼。
ほ、本気や
私たち以外誰もいないボックス。
アカンアカン、じっと見ている場合やないネン。
今日からこの人が私のリーダーなんや。
練習、せんと・・・。
現実に引き戻された私は、あわてて支度にかかった。
西部日本ラテン戦はルンバ・チャチャチャの総合で優勝が決定する。
チャチャチャはお初だが、ルンバ<を競技会で踊るのはこれで3回目。
私、ルンバには、ちょっと自信アリ!なんだよなぁ。
だって京大部内戦は優勝したし、
春関西戦では団体戦でも決勝まで残ったんだもの。
まぁ、わたしだけの力やないっていうても、ね。
みんなにも褒めてもらったし。
ニヒル君だってきっと・・・と思っていたのだが。
「やりますか・・・?」
着替えを終え、シャドウをしている私の背後から、ニヒル君の声。
あぁ、いつも、こんな他人行儀に声をかけてくる人だったなぁ、と思いながら、
私は、彼のほうに向きなおった。
さぁ、いよいよ、リベンジにかけて練習の始まりだ。
久しぶりに、ニヒル君と踊る・・・ルンバ。
あれっ? ナ、なんか変だぞ。
マーカス君と感じが違う。
そりゃぁそう?
でも、一応、ルンバは競技会用のルーティンがあって、
全員がそのとおりに踊っているはずだから、
こんなに違うはずないんだけどなぁ。
なんて思いながら踊っていたら、
ニヒル君もなんか勝手が違うなぁって感じ。
何回目かのオープン・ヒップ・ツイスト アレマーナで、
ん?
ついに踊りをやめて、首をひねる彼。
おっかしいなぁって感じで、(苦)笑ってる・・・?
な、何かおかしい?
「いつも、こうやって踊ってんの?」
「え、変?」
「ん~って言うか、ソコっていうところに、おらへんねん」
「ソコっていうところ?」
「リードしようと思ったら、外される・・・」
アッ! て感じよ。
私、決定的に自分に欠けているところを指摘されたんだって、
すぐにわかってしまったんだ。
「もう少し男性のリードを待って」
とかいう話だけでは解決できない、重大ななにか・・・。
「この線で踊っていても、今以上はうまくはならないよ」の宣告どころか、
エエ気で踊ってたかもしれんけど、お前はズットおかしかったんやで
って、突きつけられたかのように、ガーんん!!
わー やっぱり、ただのハッタリやったんや。
部内戦の優勝も、団体戦の決勝入りも、きっとマグレ。
というより、
ひょっとして、みんな本当は陰で笑ってたん違う?
あ、そういうたら、あの審査員講評の時も・・・
ドンづまってゆく私。
いきなりのネガティブ街道まっしぐら。
いっぺんに、自信喪失・・・。
「もっと、力抜いてみ、それに・・・」
いつものような、冷静な声で教え始める彼。
あ~あかんわ。
ニヒル君、ガッカリしたやろうなぁ。
私のこと、もうちょっと上手やって思うてたやろうに。
もう、あかんわ・・・。
私は、どんどん悲しくなっていき、彼の声を遠くで聞いていた。
少し指摘を受けるだけで「青菜に塩」状態、
シュンとなって落ち込んじゃう・・・。
でもね、
彼の意見がすべて正しいってワケでもないだろうに、今だとそう思うわけよ。
そこまで、彼の言葉を重くとって勝手に落ち込むことないだろうし、
ってね。
だって、
楽しくガンガンに踊っていた時期は、
決して否定するべきものではないんだもの。
ただ、それはいったん卒業し、
もっと密なリード&フォロー、細やかなカラダの動き・・
そんなレベルアップした「楽しみ」に目覚める、
新たな成長の時期に来ただけなのに・・・。
そう、ルンバにも、成長の段階ってものがあるんだな。
「だから、欧米では初心の頃を最も大切にするの。
ビギナーのレッスンには、最もベテランの教師がつくのも、その表れね」
と、ジュンコ先生。
Q「じゃぁ、ジュンコ先生が初心者にルンバを教えるとき、
気をつけていることって何ですか?」
テクニックを与え過ぎないってことかな。
先「ルンバとはこういうイメージのものだって刷り込まれる時期だから、
この頃に与えたものは、
絶対せねばならぬものとういうこだわりを生んでしまって、
その後の成長の妨げになることが多いのね、
だからできるだけ良いもの、
純粋なものだけを与えたいと思っているわ」
Q「ではまず、
具体的に与えないほうがいいルンバのテクニックって何ですか?」
先「まず、フットワーク。『ボールから』とかは考えないほうがいい。
つまり、どこから出ても全くかまわないの。
フットワークはカラダの中の運動のある意味“結果”に過ぎないものだから。
それにつまりフットワークはカラダの中の運動、特にインナーマッスル、
以前話した大腰筋(第23話参照)などの影響を受けやすいため、
正しいボディの運動ができるようになってからの習得で全然大丈夫。
そのほうが、ナチュラルで美しいフットワークができるようになるわ」
Q「それは、“ターンアウト”とか“ラテンクロス”とかもですか?」
先「エエ、すべてよ。インナーマッスルとの連動で作られるものだからね」
Q「よく、ヒールから出たら怒られるって人も多いと聞くのですが・・・」
先「ヒールから出ても、もちろん問題ないわ。
むしろ、それでその人がカラダのバランスを取ろうとしている時期だから、
そのまま見守るほうが賢明よ。
無理にフットワークを作ることで、
足に力を入れて踊ることを覚えたら大変だからね。
あ、だから膝を伸ばす必要もナシ。
足の力はできるだけ抜いておくほうがいいからね」
Q「そうなんですか!
では、初心者に与えないほうが良いテクニックって、他にもあるんでしょうか?」
エエ、あるわ。それはね・・・
続く 第35話へ
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今回のリーパー発表、ニヒル君にとっては、
たぶん私が想像していた以上に嬉しいものだったんだろう。
発表終了後すぐに、
珍しく自分のほうから、一直線に私のところへやってきて、
「今日、何時空いてる? 練習しようや」
その顔は今まで見たことがないくらいに、
明るくて、無邪気で。
あ、彼、苦しんでいたんだ・・・。
一瞬でいろんなことが、わかったような気がした。
私は思わず胸がキュッと詰まった。
ごめん、ちょっと自分だけいい気になっていたよ・・・。
「ホンなら、今日5時に」
フットワーク軽くボックスから出ていく彼の背中を見送りながら、
「がんばって絶対優勝しよう」と、
私は心の中で声をかけていた。
5時ちょうどにボックスへ行くと、何とニヒル君一人。
しかも、結構なボリュームで音楽をかけ、シャドウの真っ最中だ。
エ、いつからやってたん?
シトッと汗ばんだ額。
気分を乗せ、ダイナミックにルンバを踊っている。
オープン・ヒップ・ツイスト
アレマーナ
ハンド・トウ・ハンド・・
そういえば、彼のダンスをこうやってマジマジと見るのは、しばらくぶりだ。
マーカス君と組んでいる頃、練習時間がうまい具合にズレることが多くて、
ボックスで顔を合わすことは、ほとんどなかったんだ。
やっぱ、うまいなぁ…
また、一段とダンスが大きくなっている。
流れるようなアームアクション、途切れることのないボデイの動き・・
音楽ともすごくマッチしていて、思わず目を奪われてしまう。
私が入ってきて、こうやって見ていても、
全く気にもせず、何かに憑かれたように踊りつづける彼。
ほ、本気や
私たち以外誰もいないボックス。
アカンアカン、じっと見ている場合やないネン。
今日からこの人が私のリーダーなんや。
練習、せんと・・・。
現実に引き戻された私は、あわてて支度にかかった。
西部日本ラテン戦はルンバ・チャチャチャの総合で優勝が決定する。
チャチャチャはお初だが、ルンバ<を競技会で踊るのはこれで3回目。
私、ルンバには、ちょっと自信アリ!なんだよなぁ。
だって京大部内戦は優勝したし、
春関西戦では団体戦でも決勝まで残ったんだもの。
まぁ、わたしだけの力やないっていうても、ね。
みんなにも褒めてもらったし。
ニヒル君だってきっと・・・と思っていたのだが。
「やりますか・・・?」
着替えを終え、シャドウをしている私の背後から、ニヒル君の声。
あぁ、いつも、こんな他人行儀に声をかけてくる人だったなぁ、と思いながら、
私は、彼のほうに向きなおった。
さぁ、いよいよ、リベンジにかけて練習の始まりだ。
久しぶりに、ニヒル君と踊る・・・ルンバ。
あれっ? ナ、なんか変だぞ。
マーカス君と感じが違う。
そりゃぁそう?
でも、一応、ルンバは競技会用のルーティンがあって、
全員がそのとおりに踊っているはずだから、
こんなに違うはずないんだけどなぁ。
なんて思いながら踊っていたら、
ニヒル君もなんか勝手が違うなぁって感じ。
何回目かのオープン・ヒップ・ツイスト アレマーナで、
ん?
ついに踊りをやめて、首をひねる彼。
おっかしいなぁって感じで、(苦)笑ってる・・・?
な、何かおかしい?
「いつも、こうやって踊ってんの?」
「え、変?」
「ん~って言うか、ソコっていうところに、おらへんねん」
「ソコっていうところ?」
「リードしようと思ったら、外される・・・」
アッ! て感じよ。
私、決定的に自分に欠けているところを指摘されたんだって、
すぐにわかってしまったんだ。
「もう少し男性のリードを待って」
とかいう話だけでは解決できない、重大ななにか・・・。
「この線で踊っていても、今以上はうまくはならないよ」の宣告どころか、
エエ気で踊ってたかもしれんけど、お前はズットおかしかったんやで
って、突きつけられたかのように、ガーんん!!
わー やっぱり、ただのハッタリやったんや。
部内戦の優勝も、団体戦の決勝入りも、きっとマグレ。
というより、
ひょっとして、みんな本当は陰で笑ってたん違う?
あ、そういうたら、あの審査員講評の時も・・・
ドンづまってゆく私。
いきなりのネガティブ街道まっしぐら。
いっぺんに、自信喪失・・・。
「もっと、力抜いてみ、それに・・・」
いつものような、冷静な声で教え始める彼。
あ~あかんわ。
ニヒル君、ガッカリしたやろうなぁ。
私のこと、もうちょっと上手やって思うてたやろうに。
もう、あかんわ・・・。
私は、どんどん悲しくなっていき、彼の声を遠くで聞いていた。
少し指摘を受けるだけで「青菜に塩」状態、
シュンとなって落ち込んじゃう・・・。
でもね、
彼の意見がすべて正しいってワケでもないだろうに、今だとそう思うわけよ。
そこまで、彼の言葉を重くとって勝手に落ち込むことないだろうし、
ってね。
だって、
楽しくガンガンに踊っていた時期は、
決して否定するべきものではないんだもの。
ただ、それはいったん卒業し、
もっと密なリード&フォロー、細やかなカラダの動き・・
そんなレベルアップした「楽しみ」に目覚める、
新たな成長の時期に来ただけなのに・・・。
そう、ルンバにも、成長の段階ってものがあるんだな。
「だから、欧米では初心の頃を最も大切にするの。
ビギナーのレッスンには、最もベテランの教師がつくのも、その表れね」
と、ジュンコ先生。
Q「じゃぁ、ジュンコ先生が初心者にルンバを教えるとき、
気をつけていることって何ですか?」
テクニックを与え過ぎないってことかな。
先「ルンバとはこういうイメージのものだって刷り込まれる時期だから、
この頃に与えたものは、
絶対せねばならぬものとういうこだわりを生んでしまって、
その後の成長の妨げになることが多いのね、
だからできるだけ良いもの、
純粋なものだけを与えたいと思っているわ」
Q「ではまず、
具体的に与えないほうがいいルンバのテクニックって何ですか?」
先「まず、フットワーク。『ボールから』とかは考えないほうがいい。
つまり、どこから出ても全くかまわないの。
フットワークはカラダの中の運動のある意味“結果”に過ぎないものだから。
それにつまりフットワークはカラダの中の運動、特にインナーマッスル、
以前話した大腰筋(第23話参照)などの影響を受けやすいため、
正しいボディの運動ができるようになってからの習得で全然大丈夫。
そのほうが、ナチュラルで美しいフットワークができるようになるわ」
Q「それは、“ターンアウト”とか“ラテンクロス”とかもですか?」
先「エエ、すべてよ。インナーマッスルとの連動で作られるものだからね」
Q「よく、ヒールから出たら怒られるって人も多いと聞くのですが・・・」
先「ヒールから出ても、もちろん問題ないわ。
むしろ、それでその人がカラダのバランスを取ろうとしている時期だから、
そのまま見守るほうが賢明よ。
無理にフットワークを作ることで、
足に力を入れて踊ることを覚えたら大変だからね。
あ、だから膝を伸ばす必要もナシ。
足の力はできるだけ抜いておくほうがいいからね」
Q「そうなんですか!
では、初心者に与えないほうが良いテクニックって、他にもあるんでしょうか?」
エエ、あるわ。それはね・・・
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