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「ジュンコちゃん、マーカス君のほうが良かったんやないの?」
そのY先輩のひと刺しには、“ドキっ”としたけど、
今にして思えば、ホントありがたい言葉だったとも思っている。
なぜって、スーゴク気分が楽になれたから。

絶対表には出すことのない、出せない、出してもしょうがない・・・

そんなお蔵入りするべき感情だと思っていたんだ、
「恋人にはニヒル君が良いけど、リーダーにはマーカス君がイイ」
なぁんて。
だって、子供が言いそうな、自分に都合の良いわがままでしょ。

(幼子ジュンコ)
「あのね、ジュンコね、わかったの!
恋人としては、ニヒル君が良くて、
リーダーとしては、マーカス君がイイってこと!
でね、最初はね、
ニヒル君に恋人&リーダーというどっちもの関係を期待したんだけど、
なんだか違うって途中で気がついて、
おかしいなぁ、どうしようかなぁと思っていたら、
マーカス君が現われて、
『あ、リーダーはこの人のほうがイイ』ってジュンコね、
思ったんだぁ、そんでね・・・」

義理も人情もなく、またそれを引っ張ってくるべき、
理性も存在せずの“幼子”が、すごい発見でもしたかのように、
ニッコニコ笑って、お母さんに報告。
で、お母さんは、
「ジュンコ、良いところに気がついたねぇ、偉かったねぇ。
それじゃ、ダンスのリーダーはマーカス君にしなさい。
ニヒル君のことも恋人として付き合たいかったら、ソウしていいからね・・・」



なんて、誰が言うネン!!!


こんな場合たいていは、
「ジュンコ、そんなこと言うもんやないでしょ。
ニヒル君の気持ちを考えてごらん?
あんたがダンス続けたい言うたから、
頑張って、続けていく気になったんヤないの!
それを、リーダーはマーカス君が良いなんて。
そんな身勝手なこと言ってどうするの!! 」


で、決め台詞は、

「ダンス続けたいんやったら、我慢しなさい・・・」


でもここで、ちょっとコワーいこと、考えてみよう。 
Y先輩の、
「ジュンコちゃん、別におかしくないんやよ。
恋人としてはニヒル君が良くても、
リーダとしてはマーカス君のほうが良いっていう気持ち。
ダンスではアリなのよ」

を、真に受けて、行動を起こしていたらどうなっていただろうか?

・・・まず、執行部に、
「お願いです、リーダーはこのままマーカス君で、いかせてください。
私もマーカス君もそれを望んでいるし、
いい成績を取ることで、きっと関大のためにもなると思うのです」
「え?そ、それは良いんやけど、
ジュンコちゃん、ニヒルと組みたいんやなかったの?」

「ニヒル君とは、確かに恋人としては発展もあるし、
好きという感情もあるのですが、
リーパーとしては、お互いの良さを引き出し合うことができないのです。
深くはわからないのですが、
ダンスに何を求めているのかが違うように思うのです。
そんな二人が組んでいても周りにもいい影響が出ないだろうし
自分たちとしても成績をあげられるかどうかは疑問です」
なぁんてサラサラ、
相手が、
「そりゃまぁ、そうだ」としか思えないような話を展開し、
「ニヒル君は、私が説得します」
「ニヒル、ダンスやめる言いよるんちゃうか?」
「彼がダンスを、自分を表現できるとかけがえのないものと感じていたら、
それでも続けると思います。
私とのことは、ダンスが自分にとって、そこまで大切なものなのかどうかを、
考えるきっかけに過ぎないと思うのです。
結局、彼がダンスを続ける、続けないは、
彼自身の問題であって私は関係ないのです」


ワワわ!キッツぅー! ナンチュウ鼻もちならん女やー。


でも、当時の私はもちろんソんなことはしていない。
他人に自分の思いを打ち明けたのも、このときがはじめてだったんだ。



「先輩、実は・・・わたし、
ニヒル君と組んでいるのがずっとしんどかったんです」




言-っちゃった、言っちゃったぁ、Y先輩に言っちゃったぁ♪♪


ところが、今の今まで、すごく誠実な感じで聞いてくれていたY先輩、
瞬間に、
あ、この子、なにか重大なこと打ち明けるゾぞぞ
という、興味本位に近い感情をチラと動かしたのを、
ジュンコは見逃さなかった。
「やっぱ、アッチの線はやめとこ」
アッチというのは、言うたら、恋愛ドロドロ路線。

例えば、
「実はマーカス君のことリーダーとして好きなんだか、
本当はマジで好きになりかけてんだかわからなくなって、
ニヒル君と組んでいると、
マーカス君と組んでいて楽しかった頃を思い出したりして、
なんだかつらくなってきてぇ~」
みたいなノリ。

これは、雰囲気に流されて、何が本当かわからなくなってきたり、
言わんでもええこといっぱい言ったりする恐れもあるから、ヤーメタ。

で、
「ニヒル君と組んでいるのがずっとしんどかったんです」
の理由の路線変更を試みるや、

ポンとこんな言葉が・・・。


「私、自分のことがイヤになってくるんです」


こんなことを打ち明けるべき時?


打ち明けて良い相手?


そんなことはどうでも良かった。
この言葉を言ったが最後、
ここが、夏合宿の打ち上げの席で、
相手は、大先輩でOGのY先輩であるという現実が、フッと遠くの景色になり、
気がつけば、一生懸命自分の心に向かい合うジュンコだけがそこにいたんだ。
「彼とダンスをしていると
私がいくら頑張っても彼に言われるばっかりだし、
特にラテンをしていると、
彼のように踊れない自分がイヤになってきて・・・。
すごいコンプレックスに陥ってしまうんです。
自分に自信が持てない。
いっつも、ニヒル君の足、引っ張ってるみたいでそれがつらいんです・・・」



あ、私ってそんなこと思っていたんや・・・。


そういえば、私はいつもそうだった。

ダンスのことに関しては、常にニヒル君が上で私が下。
彼が正解で私が間違い。

そんな絶対的な力間係を、無意識のうちに生み出していたんだ。
ニヒル君にしてみれば、
「そんなつもりはない、僕は平等だと思っているよ」だろう。
おそらくは私サイドだけの問題、
でも、彼がいないと起こり得ない問題ともいえるのだ。

Y先輩に思いを打ち明けている間に、
どんどん自分の頭の中が整理されていく・・・。
自分の気持ちにも正直になってきたんだな。

で、ついに、
「恋人にはニヒル君が良いけど、リーダーにはマーカス君がイイ」
って、
実はそんなに単純な感情じゃなかったんだって気がついた。

恋人であるからという感情を抜きにして
純粋に、ダンスのリーダーとしてどっちと組みたい?
ってなったとき、軍配は「マーカス君」に上がる、
この気持ちの意味するところは、

つまり、


自分のコンプレックスに向き合わないですむ!


これが意外や意外デカイんじゃないの!?
ってことに気づいたのだ。


では、ちょっと想像してみよう。
先ほどのちょっとコワーい場面
執行部に、
「マーカス君と組ませて欲しい」を告げるシーンが、
現実ヤッチャッタもので結果、
「マーカス&ジュンコ組み」が誕生していたならば、どうだったのか?

自分のコンプレックスに向き合うなんて、
おそらくは経験をせずに済んだはず。

彼、マーカス君とはステップを覚えるときの速さも一緒だし、
テクニックなどに関して湧いてくる疑問の方向性も似ている・・・
だから「自分だけが・・・」ってヒケメを感じないですむんだもの。

それどころか、まじめーに練習しているにもかかわらず、
結構笑いが絶えなくて、
筋肉が常にリラックスできる状況にあったためか、
私特有の欠点(カラダに力が入りやすい)までがずいぶんカバーされちゃう。

で、苦しいこともあったろうが、
基本的には楽しみながら、天下取りごっこをやり続け、
おそらくは、何らかのカタチで本物の天下をとり、
卒業後も、プロになるかアマに進むかは相談して決めつつも、
ダンスはもちろん続け、
ひょっとしたら、43歳になった今も、
「まだ、踊ってハルんですか?」なんて周囲の声もものともせずに、
バリバリの現役!?なんてのもアリだったカモなぁ。


ん?そっちのほうが幸せそうだって?
ジュンコ先生、失敗したねぇ、後悔してんじゃねぇですかって?
ところがね、そうじゃなかったんですよ・・・。


ホント、人生ってうまいことなってるわ!!


どういうことかというと・・・
                     

      続く 第33話へ


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