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競技会の会場では、目に見えない所で色んなドラマが繰り広げられている。
競技であるからには、フロアーの上は “戦いの場”、
一応、大学対抗だから「敵は他校にアリ」なんだけど、
実は闘っているのは、ふたり
つまりカップルなんてこともよーくあるんだな。

どれだけ険悪なムードに、二人の仲が発展していても、
まぁ、踊っている最中は、
ニコニコ笑顔で通さなきゃいけないのが辛い。
踊り終わってフロアーから引き揚げてくるや、
いきなり、場外乱闘・大舌戦!?の始まりィ~ってか?

でも、初めてあのシーンを目撃したときは、ちょっとドキドキしたなぁ。
今の今まで幸せそのものの笑みを浮かべ、
優雅で格調高きワルツの世界にいたはずの二人。
それが・・・
音楽が止み一礼してフロアーから立ち去るや、
とたんに石やナイフが飛び交いそうな大激論勃発!なんだもんなぁ。

その二人っていうのが、初めて目の前でダンスを披露し、
その“仲睦まじき”行為で私のダンス部入部を決定づけてくれた、
4回生の山さんと、ユー子さん。

恋愛カップルである二人の口論は、
お互いのことをヨーク知り尽くした上でのモノゆえに、
その厳しさもハンパじゃない。
「そもそも、アンタの中途半端な性格が!!△□×」
なんてキツーイ言葉がボンボン。

「お前、なんやねん、
何であれぐらいのステップ、ついてこられへんねん!」


「あんたのリードが悪いネンヤン!!
それになんで、人のおるとこ、おるとこばっかりに行くのん!?
ガンガン(人に)当たってバッカリやんか!」


どうもユー子さん、後頭部を他カップルにぶつけられ、
髪のセットが乱れたらしい。
の出るような怒りの目ん玉で大きな手鏡を覗き込みながら、
一生懸命に乱れた髪をピンで留めている。
が、思うようにうまくいかない。

バラバラっとほかの所まで崩れてきて・・・

「アアん!もう、ムチャクチャやんッ!!」
と山さんをギーッと睨みつける。

「あのなぁ、それはオレのせいか!?」

「“オレ”以外の誰やノン!!」
ユー子さん、泣きださんばかり。

「おい、もう1回ステップ確認しておこう。
そんなん(髪のこと)もうそんでエエがな」

山さん、さっきうまくリードができなかった箇所が気がかりなようで、

でもユー子さん、
それよりも、ヘアーの崩れを何とかしたい、アー女ごころ・・・。

「この人、いっつもこうやねん!絶対、自分は悪くないって思ってる」
ユー子さん、そう言い捨て、
山さんの待つフロアーの隅に行き一緒にステップのチェックを始めている。
またそこで口論・・・。

でも周りのみんなは、ぜーんぜん気にする風もなく、
「いつものことよ。仲がいいほど喧嘩するってね」ぐらいのノリ。


次のヒート、
あ、山さんとユー子さんが踊っている・・・。
今度はうまくいったみたい。
さっきの大喧嘩はどこへやら、仲良さそうに笑顔で戻ってきたよ。


ふーん、色々大変だなぁ。


勝ち残っていくためには、もちろん、一生懸命さも必要だけど
私の夢というか、希望は、
競技会そのものも、そのプロセスである練習も

二人、力を合わせて

エキサイティングに、スリリングに、ロマンティックに楽しみたい!!  

その先にはきっと輝かしい勝利が待っている・・・ってこと。


たぶんマーカス君とは、
その辺の気持ちがピッタリ!合っていたんだろうと思う。
それに彼は、
ダンスのパートナーってものをスペシャルな存在として考えていたはずだ。
友達以上恋人未満・・・
人生の同志・・・
ダンスを通し、お互いを支え合い、
心とカラダの両面からサポートし合える、
メンター(信頼のおける相談相手・助言者)・・・

たとえ一時期だけのパートナーであっても、かけがえのない存在、
高め合っていくべき相手として良い関係を築きたいという、
彼の思いは、
色んなシーンでのほんの小さな言動からでも容易にうかがい知れた。

例えば、
集合場所だった難波のロケット広場に到着するやすぐに、
「おい、オレのパートナーはおるかぁ?」って必ず声をかける。
で、
「お?今日のヘアースタイル、ええやん」
てなチラ褒め言葉も添える心遣い。

おまけに今日は、
「あのドレス(団体戦の)ちゃんと持ってきたか?」
そんなチェックも忘れない。
「調子、どうやぁ?昨夜は早よ寝たか? 」
と、さりげなく。
で、最後にニコーって笑いながら、
「ジュンコ、今日はヤ・ル・ぞぉ」の勝利宣言。

そりゃぁ、パートナーとしては、
「ええ、あなたのためにもがんばります」
って気にもなるわね。

会場でも、始終ステップなり、ボディポジションなりをチェックしながら
一緒に士気を高め合う。 

ん? それにしても今日はなんだかビンビン視線を感じるなぁ。
今期最初の公式戦で他校のOB・OGも結構いっぱい来ているんだけど、
心地イィほどの“注目の的”だわね。
どうやらまだ、前の京大部内戦での優勝の余韻を引きずっているみたい。
「おいおい、あいつらやで。すごい新人っていうてたん」
ってところじゃぁないの?

わぉ、スターやん ウレシイナァ ヤル気でまんなぁ
マーカス君も私も全くその辺は気負うところがなく、
騒がれれば騒がれるほどにもっと気分良くなって、
えちゃうタイプだもんなぁ。

ノリノリで「では、ご期待に応えてみせましょう!」って感じ。

さぁ
まず最初の種目、タンゴ。
今日のリンクの切れは抜群!
もう、首よ吹っ飛べとばかりの熱演だ。
マーカス君のボディもいい感じ。
エネルギーがボンボン伝わってくるよ。

モチ、スローは絶好調!
昨日のプロレッスン、あれが、ヤッパ利いたなぁ。
フェザーステップやるたびに、
「ああーん、ここ楽しい!」そう思っちゃう。
大嫌いだったのに、一番大好きなステップになっちゃった。
マーカス君とのトップラインがきれいに離れている実感がある。
後退もスムーズ!!
コリャぁ、羽が生えたように踊れてるんチャうん!?


結果は、見事優勝!!


マーカス君、声をかみ殺しての、ガッツポーズだ。
で、「ジュンコ、ようやったな」肩をポン。
うれしいじゃない、この一言、このボデイ・タッチ。
次に、気持ちをさっと切り換えた彼、キッと目を見据えてこう言った。
「ホンマの決戦はこれからやでぇ」

おぉっそうくるか! さすがじゃ。
これは前座、勝って当然ってか。
よ~し団体戦も、やったるでぇ~。

いよいよドレス姿に変身だ。待ちに待ったこの瞬間。
ちょい派手メイクに羽の髪飾り、
ダイヤストーンのネックレスに、イヤリング…
もう、ダンスだから許される“まんかんしょく”で登場だ。

おぉ、みんな注目し・て・る。

マイ・リーダー、マーカス君の出迎えだ。
「よう、似合おうてるわ。よっしゃぁ、がんばろな」
とまた肩をポンポン。

種目は、絶好調のスロー・フォックストロットと
そして、セクシードレスでギンギンのルンバ。
並みいる3・4回生に交じって堂々踊り切る。


楽しい、すごく楽しい。


みんな、自分たちだけに注目している…そんな錯覚?現実?
予選を突破、すごい!準決までいっちゃったよう!!
ヤンヤ、ヤンヤと盛り上がる関大応援団。
でも、マーカス君たら落ち着いて
「ジュンコ、決勝、いくぞ」のひとこと。
そうこなくっちゃ!!

大盛り上がりの準決勝のフロアー
「380番、関大~」
「マーカス、ええぞぉ!」
「ジュンコぉ~がんばれぇ」
見ると、
予選落ちした3・4回の先輩たちまでが声を限りに応援してくれている。

・・・よ~し!!

音楽がかき消されるほどの大声援のなか、

決まったぁ、豪快なフェザーステップ、スリーステップ。

ルンバはおなじみ、なり切りパワー炸裂だ。

思い残すことがないほどに、踊り切ったぁ・・・。



結果が出た。




おおおぉっ!!


模造紙に書かれた380番に、
決勝進出を告げる赤丸が・・・しかも2種目とも!!


うへぇ~!!


       続く 第27話へ


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