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私は自分で言うのもナンだが、小さい頃からかなりの「努力家」だった。
生まれもってのドンくささを、何とかカバーできたのも、
ひとえに「私、がんばる!!」の精神力だった、と思う。

小学生の頃、まったくできなかった“逆上がり”
毎日、歩いて15分ほどかかる公園に通い詰め、
手のマメから血を流しながらの猛練習
そのくせ体育の時間には、
さも前からできていたように、悠然とやってのけたりする、
ちょっとイヤラシイ子ではあったのだけど。

そういえば、高校の時の水泳(クロール)のテストの時も。
“金づち”だった私は、
連日の猛特訓の末、何とか泳げるようにはなったものの、
息継ぎをしたら沈んじゃうため、
最後まで顔を上げずに25メートルを泳ぎ切り、
周りをびっくりさせたこともあったなぁ。

とにかく才能にはあんまり関係なさそうで、
がんばったらできそうなものには意欲を燃やし、
(ただ走るだけのマラソンみたいなやつ)
ちょっと技ありのモノは、生来の負けん気を発揮し、何とか克服。

気が付いたときには、
最初からできていた周りの“ウサギ”たちを追い抜いて、
“優秀なカメ”になったりしていたんで、
そんな頑固なまでのガンバリの結果の「成功体験」を密かに誇りに思っていた。
「人間、大切なのは、ヤル気と努力だゼ!」
そんなポリシーを胸に、生きてきたってところがあったんだけど・・・。


どうも、違うんだよなぁ、このダンスだけは・・・


単なる頑張り、一生懸命では、上手くいかないと気付き始めたのは、
確か京大部内戦が終わった頃くらいだったと思う。

あれは習い始めたばかりの
「スロー・フォックストロット」のシャドウをしていたときだった。

遠くから見ていた、3回生の先輩が、
「ジュンコちゃん、そんな足ばっかり引いたらアカンヨ」

「え?」

「もっと“カラダの下に足”を置かんと」

スローフォックストロットは女性のバックが多いため、
なるたけたくさん下がったほうがいいと思って、
一生懸命足を動かしていたのに、どうも違うみたい。

「“カラダの下に足”ですか?」

意味があんまりわからないままに、
「あぁ、大きな歩幅で下がっちゃダメってことね」と解釈。

わざと、小さめの歩幅になるように“がんばって” 練習をしていると、
ある日、2回生の男性K先輩からこんな注意を受けたのだ。
「ジュンコちゃん、もっと下がらんと。
男性のジャマや。ただの“お荷物”になるで」


ウーン

女性としては、こういう注意が一番こたえるのよねぇ。
男の“お荷物”だとか“邪魔”だとか。
すごい引っかかる言葉なんですけど。

大体あの先輩はいっつもアンナ嫌味な言い方だから、
どうも聞く気になれない・・・なんてちょっとイヤぁな気分になったんだけど、
K先輩ったらそんな私の気持ちなんてお構いなしに、ツカツカ近づいてきて、

ヌアッ!?

「この辺から“足”だと思ってみ」
と、私のカラダに触れるわけよ。

触られたところは「みぞおち」と、ちょうどその裏に当たる「背中の部分」。
「“みぞおちから足”だと思って後退してごらん」
で、私をホールドし、踊りだすK先輩。

「みぞおちから足、みぞおちから・・」
一生懸命、イメージをしながら後退してみる。

「ソウソウ、良いよ。もっとドンドン下がって」

何が良いかは良くわからないが、
いつもよりすごくスムーズに後退していってるって感じはする。

まぁ、ほとんどがK先輩のリードによるところなのだろうが、
それにしても感覚は悪くない。
足をバンバン後ろに引いているのになぜかスーっと立てるんだモノ。

こんな感覚初めて!
よーし、マーカス君との練習で試してみよう


K先輩、時にはエエことも教えてくれるわ・・・。
ちょっとだけイメージ挽回。 



さて、マーカス君とのスロー・フォックストロットの練習。
さっそく「みぞおちから足」をやってみた、
この間、K先輩と踊ってもらったような感じで。
(あれからシャドウ練習いっぱいしたもんな。
「みぞおちから足」の“あしながおばさん”をイメージしながら、頑張って)

だからその時、結構うまく、
私的には、K先輩と踊った時となんら変わらない感覚で踊れたと思ったのに、
マーカス君たら、
「お前なぁ、なんか踊りにくいぞ」

「え?」

「後ろに引く足、めちゃデカいん違う?」


えぇっ!?


「もっとなぁ、しっかり1歩1歩ちゃんと立って欲しいネン。
カラダはズーッと動き続けながらやけど」


「・・・」

「そんな、サラサラ下がって行かれたら、オレが引っ張られるやん」

私は、ちょっとムッとした。
「私はちゃんと先輩に言われたとおりやっているよ、
あんたがどっかおかしい違うん?」
と言ってしまうのは簡単だった。
でも、それもなんか違うんだよなぁってことは、何となくわかっていたし。
そんなこと言っても、根本的な問題の解決には至らず、
お互いに気を悪くしてしまうのがオチ。

それにしても、また新たな指摘。
「1歩1歩立ちながらも、動き続けるってどういうこと?」
私はただただ混乱していた。



ちょっとここで整理をしておこう。
スロー・フォックストロットにおける女性の後退

邪魔にならないように、できるだけたくさん下がろうとする
先輩からの指摘
「足ばかり引いてはダメ。“カラダの下に足を置き”なさい」

カラダから、足がはみ出ないように歩幅を小さくした
先輩からの指摘
「男性の動きを止める。“みぞおちから足”のイメージで踊りなさい」

みぞおちから踊る感覚でしっかり後退
リーダーからの指摘
「1歩1歩しっかり立ちながらも“動きを止めずに後退”してほしい」

マーカス君からの指摘を真に受けてまた頑張って練習したところで、
それはそれで“突っ込みどころ”がまだあるだろう。
下手したら、1歩1歩立つことで動きを止めてしまうか、
そうなってはダメだと、また足ばっかり引いて・・
①にまい戻ってしまいそうな。 


ウーン~


いったい、何が正しくて、そして何を目標に、練習すればいいの?

ジュンコは“がんばりどころ”を完全に見失っていた。



…月日は流れて25年、またまたジュンコ先生の登場です!
いまや、スローフォックストロットは、ジュンコ先生が最も好きな種目。

先生「一見矛盾しているかのような、
それぞれの指摘は、じつは同じことを言っているの」

ジュ「え?“カラダの下に足を置く”=“みぞおちから足” のイメージで踊る
=“1歩1歩しっかり立ちながらも後退し続ける”が一緒のこと?」

先生「ええ、正確には“みぞおちから足”の正しい意識を持つことができる、
ことで初めて“カラダの下に足を置く”ことができ、
“1歩1歩しっかり立ちながらも後退し続ける”ことができるってことね」

ジュ「へぇー“みぞおちから足”が一番ですか!?K先輩、正しかったんだ」

先生「まぁ、それぞれみんな間違いではないわ。
でも、根本のところで問題を解決しておかないと、
言われた通りをやったところで、また別の部分を指摘され…の堂々めぐり」

ジュ「ふーん、単純じゃないのね・・・」

先生「ジュンコさんへの、私からの一番のアドバイスは、


懸命じゃなく賢明に踊れってことかな」


ジュ「うわァ~、そんなん私、頭悪いみたいやん!!」



では、次回解き明かされる“みぞおちから足で踊る”の真相やいかに!!


          続く 第23話へ


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