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人は見かけによらぬモノ・・・
コレはもう、ごもっとも、世の常かもしれないが、
ダンスは見かけによらぬモノ・・・コレもまたしかりなんですねぇ~。

人呼んで「ダンス人格」ってものがありまして、
ダンスを踊るや、「あれっ?この人、こんな面持っていたんだ!!」
いつも見ているその人とは全く違う面がひょっこり現れて、
そんな意外性・新鮮さが何とも愉快。
おまけに、一緒に踊ってみて、想像以上にフィーリング・GOODとわかった日にゃぁ、
「ダンス人格の良い人」と好感度花丸急上昇!!なんてこともありまして・・・。

阪関戦のマイ・リーダー、ボガード君もそんな一人だった。

新歓の頃、講義をサボってボックス(部室)に行くと、
がらんとした部屋にポツンと一人でいる彼をよく見かけたものだ。
ボックスはそんなに広くもないのに、
更衣室だけは男女別に“完備”されている。   
・・・と言っても、部屋の隅をボロいカーテンで仕切っているだけ。
その女子更衣室の前に置いてあるチャチなパイプ椅子、
なぜかそこが彼の指定席。
いつも右足を上に組んで同じようなポーズで座っている、
少し風変わりなキャラであった。

ビートルズを意識した(そんなワケないか?)マッシュルームカット、
オレンジ色のポロシャツに、白いパンツがトレードマーク。
二重まぶたで目がパッチリ、ちょっぴり体毛が濃い目で、バタ臭い印象。

そういえば、最初は確かチョビひげもあったよなぁ。(なぜか途中でなくなった)
その下にある、リップクリームでも塗ったようにツヤツヤしている、
薄い唇は、いつも何か言いたそうにも見えた。
でも、そうかといって別段誰かと何か話すということもなく、
もちろん踊りもせずに、ただジッとしている。

初めは、まだなんとなく自分の居場所がなくて、そうしている同じ新入生なのか、
ひょっとして先輩なのかもわからずに、
まぁ、挨拶だけはする・・・そんな感じだった。

今になって思えば、はにかみ屋で、真っ正直で、情にもろくて・・
感受性の豊かだった彼は、
あの澄んだ瞳でボックスの中の色んなものを“見ていた”んだろうなぁ。

許してね、ボガード君、
あなたが同じ1回生だとわかってからも、
その雰囲気から、その存在を軽視していたことを。

また、同輩の男性部員から、
「おーいボガード!」なんて感じで、
何かとカラカワレル対象になっているのを見て、
まさかそれが、
先輩方も含め多くの男性部員からの“親しみ・愛情表現”だとは気が付かず、
「ヤーかわいそうな人や」と同情の目で見ていたことを。

その上、担当のとき、ヨレヨレのホールド&ガクンガクンのひざに、
先輩からのムチがビシバシ飛び、
ダンスセンスないんじゃないの!?ってなワルツのシャドウを見るや、
「きっと、みんなについて行けなくなって、やめちゃうんだろうな…」
なんて思っていたことを・・・。 


やがて、阪関戦に向けての練習が始まった。
(どうなることやら・・・、マぁやってみるか)

種目は、ワルツ。


ボックスで、ボガード君と待ち合わせての特訓。
来る日も来る日も、時間を惜しんでやった。


白状しよう、ボガード君。
あなたとの練習は本当に、本当に楽しかったよ。
たぶんそれは、ものすごく大切なものを共有できていたからだと思う。
それは、何かって?  


・・・ダンスに対するひたむきさ。


初めはお互い「勝ちたい」って気持ちが先行していたと思う。
でもそれが、
「ここまで練習しても上手くいかんかぁ」って感じになってきて、
自動的に心の奥のスイッチがポンって切り替わっちゃったんだな、きっと。

コレは、あきらめとは全然違う、潔さ。
そして、
「このナチュラルターンにすべてをかける!」みたいな、純粋な情熱

ボガード君は「オレは下手や、他のやつより下手なんや」という言葉に、
「どうせ・・・」という文字をつけることは最後までなかった。

明日がいよいよ競技会だっていうのに、
「治ったのは、コレだけやったね」って一緒に泣き笑いしたよね。

コレって言うのは、ボガード君のおもしろいクセ。
ホールドをしたとき、左手の人差し指を一本ピンと立てるクセだ。
「コラ、ボガードまた立ててる!」
「イェイ、アイアム、№1!ってか!?」

と、先輩からもよく注意(?)されたもんね。



さて、阪関戦当日。
マッシュルームカットを七三に分け、ボガード君気合も充分だ。





そして・・・





ドラマが起きた。






なんと、決勝に残ったのだ!!

張り出された模造紙に書かれた背番号384番に、堂々赤丸が付いた。
「オマエー、やったなぁー」
「ボガード君おめでとう」
「オイオイすごいやん」
関大応援団は大盛り上がりだ。

まだ、決勝も始まっていないのに感極まって泣き出す先輩もいる始末。

ボガード君も・・・目が真っ赤だ。



そして私も。



エース、ニヒル君は順当に優勝を果たしたものの、
どう見てもこの日のスターといえば、5位のボガード君に軍配が上がってしまう。

彼の5位は、優勝と同じくらい、いやそれ以上の重みでもって、
先輩・同輩に大きなメッセージを伝えるものとなったのだ。


「がんばれば、きっと報われる!」


その後、ボガード君がワルツをスキになったのは言うまでもない。
彼は自らの努力で、ワルツを好きになるきっかけをつかんだのだ・・・。




(7年後)
ボガード君は卒業後、他校の女の子と組んで、
アマチュアの世界に殴り込みぃ~。
スタンダードで結構良い成績を残すまでになった。

で、そのパートナーとめでたくゴールイン!!

実は、私も披露宴に招かれタンだけど、なんと突然のスピーチのご指名。

「エーー、聞いてないよぉ~」

フイを付かれたせいもあってか、いろんな思いがグッと押し寄せ、
わたしったら、話の途中で感極まって泣いてしまったんですねぇ。
急にあの阪関戦のシーンが、
ひたむきにナチュラルターンを繰り返した練習がよみがえってきてしまって…。

ふと見ると、ボガード君も目にハンカチをあて・・
花嫁さんの手前、やばいんチャゥノン? 

アラ、彼女も一緒に泣いている様子・・・。



後から、二人そろって挨拶にきてくれて、

「あ、あんなぁ、こ、コイツなぁ(花嫁さんのこと)オレにになぁ、
『あなたジュンコさんのこと好きだったんでしょ?』
って聞きよんねん。
エッ?な、ナンでそんなこと、イ、言うねんっていうたらななぁ、
『私もジュンコさんのこと好きだったから』
って、イ、言いよってン。
ホ、ほんま、アホやろ」


そんなことを打ち明けるボガード君。
その横で優しくニコニコ微笑む花嫁さん。


「私も(学連のとき)ジュンコさんに憧れていたんです」


「へぇー・・・」

こりゃぁ、ボガード君、スンゴイパートナーを手に入れたね!!



その後、お色直しのとき燕尾服とドレスに着替え、二人でワルツを・・・

拍手喝采!




ボガード君、今も彼女とワルツを踊っているのかぃ?




今から思えば、この頃からほんの少しずつではあるがわたしの心の中で、

恋愛ドラマの脚本変更(?)」が行われていたようで・・・。


               続く 第13話へ


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