2007.02.02 (第10話) 母との葛藤 ~苦しくも輝ける日々~
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ニヒル君とお付き合いを始めて、私の生活は一変した。
ここでの“お付き合い”って中には、母の言う、
「ホンマにぃ、いやらしいなぁ~」
に類する行為も当然含まれていたわけであり、
当時の私は、その一つひとつを大切にくぐりぬけながらも、
結果、親への裏切りを積み重ねていっているような、
それでいて「もうコレしかない」という覚悟が決まっていくような、
「イヤァ」と「スガスガしい」が同居した奇妙な感情を、
一緒に募らせていっていたように覚えている。
それまでは、人生における重要な変化のときを、
(例えば、お誕生日、入学式、卒業式・・)
ナンダカンダといいながらも、いつも母と一緒に迎えてきたわけであり、
その中でも過去最高の変化の一瞬であろう、
「ジュンコちゃんが女となる瞬間」を一緒に迎え、
「ジュンコ、良かったなぁ、おめでとう」
なんていう大らかなシュチュエーションは絶対「アリエナイ!」にしても、
「おかあさん、あなたの知らないところで、
あなたのまだ知らない(ひょっとしたらとんでもない)オトコの手によって、
あなたのジュンコちゃんはオンナになっちゃいましたよ」
って状況に、言い知れぬ罪悪感のようなものを感じてしまっている・・・
そんな自分をちょっと持て余しつつあるのも確かだった。
彼と一緒にいる時間が濃厚になればなるほどに、
母親の存在のチラツキ頻度も、どうしようもなく増え続け、
「オイオイ、ナンでこんなときに親のことを思い出して気にしなアカンネン」
なんて思いながらも打ち消すことはできず、
「今日こそは、もう本当のことを打ち明けよう!」と、
思ったことも数知れず・・・。
そういえば、彼と急接近した頃だったかな、
実家がモノスゴーく、遠く感じるようになったのは。
家へ帰る時間がどんどん遅くなっていき、ついに最終電車。
「あ、もしもし、おかあさん?ワタシ。
言うノン忘れててんけど、今夜ネ、
※夙川女子短大の人たちと一緒にワークショップ開くネン。
すごく遅くなると思うから、先に寝てて」
※実際のダンスパートナー校であった。
踏切の近くなどの、
“うるさくて声が聞こえにくい場所にある公衆電話”をワザと選び、
お母さんの脳ミソではすぐに理解できないだろう&モットモらしいワードを用い、
一気に、そして一方的に、言いたいことだけを告げる。
「えーナンやノン?またぁ、いきなり…」の状態に追い込んでから、
「ホンなら、さっきからずっと先輩に待っててもうてるから、モウ切るわ」などと、
“これ以上話すと、人に迷惑かけることになる”
なんてムードをかもし出し、
他人に対して必要以上に気ィ遣いの母の弱点を逆手に取る、テクニック。
「あーソウか、悪いことしたなぁ。ヨッシャ、ヨッシャわかった、気ィつけや…」
ナーンにも、わかっていないクセに、ホントは聞きたいことあるだろうに、
そそくさと自分から電話を切ろうとする母。
ホッ、上手くいった・・・。
「ごめんね…」の言葉をグッと飲み込み、そっと受話器を置いた後、
「もう知らないっ」とばかりに小走りで彼の元へ・・・
なんてシーン、何度も経験したよなぁ・・・。
終電でオモッキシ熟睡し、あーやっと着いた。
うわ、もう零時まわってるわ。
と? 改札口のところにポツリたたずむ恨めしそうな人・・・。
「おかあさん!?」
「遅かったなぁ」
眉間に刻まれたくっきりと深いシワ、白目の部分も少し血走っている。
今にも泣き出しそうな、困ったような、エラク辛そうな表情。
いややぁ、なんか、疲れてる・・・い、いつから待ってタン?
「遅くなるって言うたやんか!!」
「聞いたよぉ。でも、夜道危ないやろ。
縁起でもないことバーッカリある世の中やから」
「・・・」
また始まった。
私はちょっとキレてきた。
キレてきたけど、ちょっぴり後ろめたい気持ちが邪魔をして、
ちゃんと会話にならない。
それに、今日の言い訳はナンやったかな?とっさにでてこない。
「こんなん、されたら困るわ。ちゃんと言うたやんか」
「親が娘のこと心配するノン、当たり前やろ。それに・・・」
「何やの?」
「近所の人が見てはったらカッコ悪いヤン。
『お嬢さん、いつも遅いですなぁ、何してはりますノン?』
って裏の河本さんとこのおばちゃんに聞かれたわ」
ハァー・・・。
明日、朝起きて、
タイミング見計らって本当のこと言うても良いかなって思ってたのに・・・。
ヤッパ、やめとこ。
テナ繰り返しが、続き、いよいよまで来たわけなのだ・・・。
おかあさん、
今では笑い話で言い合えるようになったね、この頃のこと。
ダンスとニヒル君で埋め尽くされたかのような、大学生活。
今の“私”になるためにどうしても必要な日々がそこにはあったんだよ。
「あんたを関大に入れたんは、まちがいやった…」
という言葉を最近ようやく聞かなくなって、ジュンコはとても喜んでいる。
さて、今日は電話しなくていいように手はすでに打ってある“外泊予定日”。
彼と一緒にニャンニャン仲良しが、絶対必要な日なのだ。
なぜッて!?
初めてのリーパー発表があるんです!!
(リーダーは男性、パートナーは女性。リーパーとはカップルのことを指す)
ニヒル君は“夏の合宿杯”で大方の予想を裏切らずみごと優勝し、
新人戦・エースナンバーをゲット。
今回の競技会は「阪関戦」という練習試合みたいなもので、
伝統的に「関大のエースが優勝する」ってのがお決まりらしいから、
彼には大いに期待がかかってくるってワケ。
それに、彼と組んだ子はほぼ自動的にトロフィーが付いてくるから、
「パートナーは誰に?」って注目の的だ。
新人戦は、「阪関戦」のような練習試合的ものも含めて8~12月までの間に3回、
翌年の春に3回、計6回ある。
そのうち、前半の3回は1競技会ごとに新たなリーパーが発表される。
つまり、とっかえひっかえ、いろんな部員と組まされ、
その間、3回生の執行部が「誰と誰が良い相性か」を審査するのだ。
ソレを踏まえて、年の暮れに、
後半(1~3月)のやや長期にわたるリーパー発表がある。
なんてことも、
自分が執行部になってから解った仕組みで、新人の頃はサッパリ。
だから誰に当たっても、1回1回全力を尽くすのみ。
正に“人事を尽くして執行部の命令を待つ”・・・と言う感じだ。
私の予想では、しょっぱなの「阪関戦」はナイだろうなって感じ。
まずは、離されるだろう。
(実は執行部のみならず、すでに私たちの仲はバレバレ。
でも、タテマエ上はモチ、禁止)
さて、いよいよ発表だ!
「エースナンバー380番、ニヒル君」
ドキ
ドキ
「パートナーは、Mちゃん」
あーぁ、ヤッパ、アカンかったぁ。
彼は表情を全く変えず、静観している様子だ。
Mちゃんは、ちょっと興奮状態。
うっすらと頬を赤らめている。
う~~ん、
でもマァ、彼女なら許す。
いろんな意味で“無害”だ。
というより、私は・・・?
ナカナカ呼ばれない。
あ、
「背番号384番○○君にジュンコちゃん」
えぇぇ~マジィ~!?
続く 第11話へ
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ニヒル君とお付き合いを始めて、私の生活は一変した。
ここでの“お付き合い”って中には、母の言う、
「ホンマにぃ、いやらしいなぁ~」
に類する行為も当然含まれていたわけであり、
当時の私は、その一つひとつを大切にくぐりぬけながらも、
結果、親への裏切りを積み重ねていっているような、
それでいて「もうコレしかない」という覚悟が決まっていくような、
「イヤァ」と「スガスガしい」が同居した奇妙な感情を、
一緒に募らせていっていたように覚えている。
それまでは、人生における重要な変化のときを、
(例えば、お誕生日、入学式、卒業式・・)
ナンダカンダといいながらも、いつも母と一緒に迎えてきたわけであり、
その中でも過去最高の変化の一瞬であろう、
「ジュンコちゃんが女となる瞬間」を一緒に迎え、
「ジュンコ、良かったなぁ、おめでとう」
なんていう大らかなシュチュエーションは絶対「アリエナイ!」にしても、
「おかあさん、あなたの知らないところで、
あなたのまだ知らない(ひょっとしたらとんでもない)オトコの手によって、
あなたのジュンコちゃんはオンナになっちゃいましたよ」
って状況に、言い知れぬ罪悪感のようなものを感じてしまっている・・・
そんな自分をちょっと持て余しつつあるのも確かだった。
彼と一緒にいる時間が濃厚になればなるほどに、
母親の存在のチラツキ頻度も、どうしようもなく増え続け、
「オイオイ、ナンでこんなときに親のことを思い出して気にしなアカンネン」
なんて思いながらも打ち消すことはできず、
「今日こそは、もう本当のことを打ち明けよう!」と、
思ったことも数知れず・・・。
そういえば、彼と急接近した頃だったかな、
実家がモノスゴーく、遠く感じるようになったのは。
家へ帰る時間がどんどん遅くなっていき、ついに最終電車。
「あ、もしもし、おかあさん?ワタシ。
言うノン忘れててんけど、今夜ネ、
※夙川女子短大の人たちと一緒にワークショップ開くネン。
すごく遅くなると思うから、先に寝てて」
※実際のダンスパートナー校であった。
踏切の近くなどの、
“うるさくて声が聞こえにくい場所にある公衆電話”をワザと選び、
お母さんの脳ミソではすぐに理解できないだろう&モットモらしいワードを用い、
一気に、そして一方的に、言いたいことだけを告げる。
「えーナンやノン?またぁ、いきなり…」の状態に追い込んでから、
「ホンなら、さっきからずっと先輩に待っててもうてるから、モウ切るわ」などと、
“これ以上話すと、人に迷惑かけることになる”
なんてムードをかもし出し、
他人に対して必要以上に気ィ遣いの母の弱点を逆手に取る、テクニック。
「あーソウか、悪いことしたなぁ。ヨッシャ、ヨッシャわかった、気ィつけや…」
ナーンにも、わかっていないクセに、ホントは聞きたいことあるだろうに、
そそくさと自分から電話を切ろうとする母。
ホッ、上手くいった・・・。
「ごめんね…」の言葉をグッと飲み込み、そっと受話器を置いた後、
「もう知らないっ」とばかりに小走りで彼の元へ・・・
なんてシーン、何度も経験したよなぁ・・・。
終電でオモッキシ熟睡し、あーやっと着いた。
うわ、もう零時まわってるわ。
と? 改札口のところにポツリたたずむ恨めしそうな人・・・。
「おかあさん!?」
「遅かったなぁ」
眉間に刻まれたくっきりと深いシワ、白目の部分も少し血走っている。
今にも泣き出しそうな、困ったような、エラク辛そうな表情。
いややぁ、なんか、疲れてる・・・い、いつから待ってタン?
「遅くなるって言うたやんか!!」
「聞いたよぉ。でも、夜道危ないやろ。
縁起でもないことバーッカリある世の中やから」
「・・・」
また始まった。
私はちょっとキレてきた。
キレてきたけど、ちょっぴり後ろめたい気持ちが邪魔をして、
ちゃんと会話にならない。
それに、今日の言い訳はナンやったかな?とっさにでてこない。
「こんなん、されたら困るわ。ちゃんと言うたやんか」
「親が娘のこと心配するノン、当たり前やろ。それに・・・」
「何やの?」
「近所の人が見てはったらカッコ悪いヤン。
『お嬢さん、いつも遅いですなぁ、何してはりますノン?』
って裏の河本さんとこのおばちゃんに聞かれたわ」
ハァー・・・。
明日、朝起きて、
タイミング見計らって本当のこと言うても良いかなって思ってたのに・・・。
ヤッパ、やめとこ。
テナ繰り返しが、続き、いよいよまで来たわけなのだ・・・。
おかあさん、
今では笑い話で言い合えるようになったね、この頃のこと。
ダンスとニヒル君で埋め尽くされたかのような、大学生活。
今の“私”になるためにどうしても必要な日々がそこにはあったんだよ。
「あんたを関大に入れたんは、まちがいやった…」
という言葉を最近ようやく聞かなくなって、ジュンコはとても喜んでいる。
さて、今日は電話しなくていいように手はすでに打ってある“外泊予定日”。
彼と一緒にニャンニャン仲良しが、絶対必要な日なのだ。
なぜッて!?
初めてのリーパー発表があるんです!!
(リーダーは男性、パートナーは女性。リーパーとはカップルのことを指す)
ニヒル君は“夏の合宿杯”で大方の予想を裏切らずみごと優勝し、
新人戦・エースナンバーをゲット。
今回の競技会は「阪関戦」という練習試合みたいなもので、
伝統的に「関大のエースが優勝する」ってのがお決まりらしいから、
彼には大いに期待がかかってくるってワケ。
それに、彼と組んだ子はほぼ自動的にトロフィーが付いてくるから、
「パートナーは誰に?」って注目の的だ。
新人戦は、「阪関戦」のような練習試合的ものも含めて8~12月までの間に3回、
翌年の春に3回、計6回ある。
そのうち、前半の3回は1競技会ごとに新たなリーパーが発表される。
つまり、とっかえひっかえ、いろんな部員と組まされ、
その間、3回生の執行部が「誰と誰が良い相性か」を審査するのだ。
ソレを踏まえて、年の暮れに、
後半(1~3月)のやや長期にわたるリーパー発表がある。
なんてことも、
自分が執行部になってから解った仕組みで、新人の頃はサッパリ。
だから誰に当たっても、1回1回全力を尽くすのみ。
正に“人事を尽くして執行部の命令を待つ”・・・と言う感じだ。
私の予想では、しょっぱなの「阪関戦」はナイだろうなって感じ。
まずは、離されるだろう。
(実は執行部のみならず、すでに私たちの仲はバレバレ。
でも、タテマエ上はモチ、禁止)
さて、いよいよ発表だ!
「エースナンバー380番、ニヒル君」
ドキ
ドキ
「パートナーは、Mちゃん」
あーぁ、ヤッパ、アカンかったぁ。
彼は表情を全く変えず、静観している様子だ。
Mちゃんは、ちょっと興奮状態。
うっすらと頬を赤らめている。
う~~ん、
でもマァ、彼女なら許す。
いろんな意味で“無害”だ。
というより、私は・・・?
ナカナカ呼ばれない。
あ、
「背番号384番○○君にジュンコちゃん」
えぇぇ~マジィ~!?
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