2007.01.31 (第8話) 天才ダンサーの秘訣
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「ねぇ、ねぇ、カレとはどんなキッカケで? カレからの告白? それとも…?」

イヤイヤ、何しろもう25年も前のことでしてナ、記憶のほうがどうも・・・。
ってなことは全くなく、
驚くほど鮮明にその辺のことは覚えているんだなぁ…。

部費を稼ぐためにバイトを探してた私に、
「まだ確か募集していたよ」と、
自分が始めたばかりのバイト先を紹介してくれたのが彼、ニヒル君だったのだ。

阪急「関大前駅」→「豊津」→「吹田」→「下新庄」下車、
徒歩5分くらいのところに、できたばかりのコンビニ、サンチェーン
そこでのレジ係。

ちなみに時給は420円と低い。 
でも、生まれて初めてのバ・イ・ト!
それになんたって彼と一緒。
もうそれだけでトキメキよ。

で、で、来ました!
なんとそこから彼の下宿は公園をはさんですぐなのだ。

そうか、これが恋愛ドラマの始まりかぁ・・・


予感的中!!


バイトを始めて一週間後・・・
「バイト終わったら下宿にこん?」(来ないか)
ナチュラルな誘い方。
常に沈着冷静な、いつもの彼の口調となんら変わりなく、
まるで何か別の話のついでに言ってるって感じだ。

「3時くらいには終わるから、寄るね」
おかげでこちらもフツーに答えられる。
もちろん胸はドッキドキだが。

「(夜勤明けで)寝てるかもしれないから、ドアたたいて返事なかったら、
勝手に入ってきて」

ちょっと照れたようにフッと笑った。

言ってる内容は結構“オォッ”ってことでも、
彼の口を通して出てくると、
つかみどころのない空気みたいに柔らかいものになっていて、
あんまり刺激的でないところも心地いい。
相好を崩して笑うとちょっと暗めの顔つきがいきなり華やぐ、その瞬間も好き・・・

うわぁ、もうゾッコンになってるわ。 

どんなところに住んでいるのかなぁ・・・と気になって、
一度ソッと彼の下宿の部屋の入り口まで、行ってみたことはあった。
古くて重そうな引き戸。
綺麗な筆文字で書かれたネームプレートに、律儀な彼の横顔が見えた。

あ~いよいよ、あそこの扉を開けるのね。
開けたら最後、もう元の自分ではいられなくなるんだろうな…


ジャ・ジャ・ジャ・ジャーン♪
(交響曲第5番)
ベートーベンは言いました、「これは、運命が扉を叩く音だ」と。


さぁて、この後はご想像にお任せして、
ここからは、こんなテーマに移らせていただきましょう。

カリスマダンサー・ニヒルが語る
天才ダンサーの秘訣!?


彼が入部当時からダンスがメチャクチャ上手だったことは昨日お伝えしたとおりだ。
そんな彼にみんなは、驚き憧れ、時にはねたみ・・・

晴れてニヒル君の彼女となった私は、
天才ダンサーである彼のプライベートを至近距離で「観察できる」という、
おいしいポジションを同時にゲット。
“徹底追及癖” (1月26日付の記事参照)を持つ私は、ことあるごとに、
「ナンで?どうして?」と聞きまくってきたのである。


今回は、その中から
「きっとみんなも知りたいだろうなぁ」のQ&Aを3つ公開しよう。

どうすれば早くステップが覚えられるの?

「ステップなんて、どんな複雑なものでも“前進”か“後退”か“横”かしかないんやから、基本的な最小限のパターンを身体で覚えておくといいよ。基本的パターンっていうのは英語の最重要単語みたいなヤツ」

・・・ワルツでいえばナチュラルターンみたいなもの?

「それは“単語”じゃなくて“熟語”になるかな」

・・・じゃぁ“単語”にしたら?

「“前進スウィング”と“後退スウィング”と“サイド(横)のスウィング”の3つ。その感覚を足型だけじゃなく、身体で習得するんだ。ほとんどのワルツのステップは、それからできているってそのうち分かってくるよ。ステップは似たようなものが多いから、段々と他のステップを覚えるスピードも上がってくるしね。」

・・・他には?何か、ステップを覚えるときに大切にしていることは?

「覚えよう覚えようとせずに、よーく見る。そのステップを踊ってる人の雰囲気をね。そのダンサーから湧き出してくる感情みたいなものを感じ取っていくんや。それがウソっぽい人のはダメ。で、コレ!と思ったダンサーのモノマネから入るんや」  

「なぜ誰にも習わないのに色んなテクニックができちゃうの?」

「あんまり誰にも習わないから、かえってできるんと違うかなぁ?人間の身体ってもともと、ものすごく自然にできていると信じて、先輩や先生の言うことも参考にしながら、実際はもっと自分の身体と相談しながらやったほうが良いと思う」

・・・じゃあ、ニヒル君は、師を持たないほうがいいという考えで?

「そういうわけではないよ。ただ『もっとこうした方が良い』なんていう意見は、その人特有のものであって、その人の身体にとっては、それが良いかもしれないけど、すべての人に通じるものではない、ってことが多いから。学ぶべきはもっと普遍性のあるものだと思う。そういうことを教えてくれる人には習いたいけど」

・・・ニヒル君が先生側だったらどんなことを教えたいの?

「ダンスだけでなく、もっと違う世界に行っても通用すること。例えば身体をリラックスさせることとか、自分の心の動きと身体のつながりを知ることとか、自然体ってどういうことかとか…。そういう意味で、ダンスは音楽の中にいろんなテクニックがそのまんま入っていると思うよ。ルンバのボディの動きも、ワルツのスイングも、タンゴのキレも、音楽から生まれたものだから。よーく音楽を聴いていると、“いつ・どのように”そのテクニックを使ったらいいか分かってくると思うよ」

「何か特別なこと(筋トレとか)をやっているのか?」


「筋トレの前に、リラックスかなぁ。大切にしてるのは。できるだけ身体をユルめようとしている。英国のあるコーチャーが言ってた。『誰でも要らん力を取って、身体のクセを取ったら、チャンピオンダンサーの資質が出てくる』って」

・・・身体の力を抜くって一番難しいもんね

「そう、どの世界の人もある水準以上に達したら言い出すよね。『すべてはどこまでリラックスできるかにかかってくる』って」

・・・では、身体をユルめるために何かやっていることは?

「ラジオ体操(笑)あれ、いいよ。特に肩甲骨周りがユルめられる。ほかには、精神的にリラックスすること。だから基本的に自分の好きなことだけをするようにしているよ」


誤解のないように言っておくが、
この談話は、もちろんニヒル君が、大学生のときだけではなく、
(九州弁がなくなり、大阪弁と標準語が入り混じった言葉に変化しているのを見ても分かるように)
彼のその後のダンス人生の中での、さまざまな体験から生まれ、育ち、やがて定着していった概念から発せられたものだ。
彼のダンスに対する哲学は、
今も私のダンスレッスンの根底をシッカト支えてくれていて・・・。

天才ダンサー・ニヒル君、あなたはすごい人だった…。


サァ、そろそろ新歓(新入生歓迎)期間も終わり、ダンスも本格的になる頃か・・・
と思いきや、
なんとジュンコの悲鳴が聞こえてきますぞ!!        


              続く 第9話へ


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